ゴールはウ国の“属国化”か?独裁者プーチンが目論む「自らの目標達成をトランプに認めさせる作戦」の地獄シナリオ

 

トランプとプーチンの接近に大きな危機感を抱く習近平

就任演説において「私は第3次世界大戦を防ぐ」と宣言し、安定と和平をもたらすと約束したトランプ大統領ですが、就任から1か月でその約束は破られそうな気配です。

この1か月はまさにトランプ劇場と呼んでいいほどジェットコースターのような国際情勢が続きましたが、その劇場の主役の座を今、最近の動静があまり伝えられないロシアのプーチン大統領が奪いかねない事態が生まれてきています。

それに危機感を感じるのが、ロシアを守り続けてきた中国の習近平国家主席と、欧米でウクライナの抵抗を助けてきた欧州各国です。

中国は米ロが接近することで、ロシアにとっての中国の存在価値が下がり、対ロ影響力が一気に下がることを恐れています。ゆえにミュンヘン安全保障会議に参加していた王毅外務大臣は繰り返し「ウクライナの和平プロセスに欧州が加えられるべき」と述べ、米ロの接近に釘を刺そうとしていたのが印象的です。

中国にとっては、実はロシアとウクライナの戦争の行方はどうでもよく、すごく気にしているのはウクライナの戦後復興のプロセスに中心的に関わることの確保であり、一帯一路の枠組みにウクライナの復興プロセスを組み込むことと思われます。

欧州については、すでに存在感と影響力の地盤沈下が顕著になっており、国際情勢において声を挙げても置いてきぼりにされている現状に大きな危機感を感じているため、何としても欧州がウクライナのプロセスを主導しないといけないという、必死の思いが感じられます。

ただ、ドイツがウクライナ支援から距離を置き始めていることに現れていますが、すでに欧州は一枚岩ではなく、恐らく23日のドイツ総選挙の結果を受けて、ドイツは“欧州の枠組み”から外れるような事態が待っているのではないかと予想しています。

そうなると、南欧が脱落し、北欧はEUよりもNATOを重視する姿勢を取り、東欧はロシアとのバランスを模索し始めることとなり、EUはすぐさま空中分解の危機に瀕することになります。

米ロが急接近し、諸々の国際案件が再び米ロの意向で決められるような事態が再来した場合、今度は中国と欧州は抵抗するでしょうが、恐らく米ロはお構いなしに進み、アメリカは欧州を捨ててアジア太平洋との結びつきを強め、かつ中国を包囲する体制を築くことになり、中国も国際システムから切り離す方向に進むのではないかと危惧します。

そうなると太平洋沿岸地域が今後、国際情勢の中心となり、米欧を繋ぐ大西洋の重要性が薄れるというアメリカの方針が強化されるのと並行し、復活してきたロシアが欧州を飲み込むような事態が生まれるのかもしれません(完全な妄想だと批判されそうですが)。

日本のGWごろにはトランプ政権発足から100日の節目を迎えることになりますが、その時、トランプ大統領は宣言通りに戦争を終わらせ、結果として自らが切望する盤石な基盤を確立し、2年後の議会中間選挙の勝利と、自らの後任大統領の座を共和党に与え、自らと家族の財産を守り、死ぬまで権力の座に居座るという夢を手に入れているでしょうか?

そのために今、焦っていろいろなことに手を出していますが、もし失敗した暁には、自身の破滅はもちろん、下手をするとアメリカ合衆国と、国際社会の崩壊に繋がるような、uncontrollableな世界が生まれてくるかもしれません。

派手さが目立ち、ニュースのネタを与え続けるトランプ大統領。主役の座をプーチン大統領と分け合って、結果生まれてくる世界はどのような世界なのか。

ゆっくりと落ち着いて考えたいのですが、紛争調停案件が一気に同時進行的に増えて、その余裕はいただけなさそうです。

以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年2月21日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録ください)

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