プーチンの企てを直接的に挫ける「唯一の策」
その背景には、トランプ大統領が提唱した“欧州各国軍のウクライナへの駐留”というアイデアに前向きなフランスと英国に対し、今週日曜日(2月23日)に総選挙を迎え、政権交代が確実視されるドイツは、派兵の話題は時期尚早として、本件での議論に加わることはしておらず、欧州の分裂が鮮明になっています。
またウクライナの隣国であるポーランドも派兵については「考えていない」と述べ、欧州は足並みが揃わない事態が露呈しています。
そのような中、トランプ政権内でロシア・ウクライナ問題の特使を務め、今週の協議にも参加しているケロッグ特使は「欧州が交渉のテーブルに参加することはない」と明言し、「今後、米ロ間の交渉に参加するべきなのはウクライナのみ」という方針を示しています。
ケロッグ氏の周辺からは「ロシアに対して非常に厳しい態度を取り続ける欧州が参画すると、ロシア側からの反感が高まり、交渉がまとまらないと考えている。ウクライナは当事者なので排除することはないし、するべきではないが、あまり米ロをこれ以上刺激すべきではない」と釘を刺していることが伝わってきます。
この事態に、調停グループとしては非常に懸念をしており、米欧のスプリットが鮮明になればなるほど、戦後プロセスにおいても米欧を切り離すことができ、「停戦監視のための軍事・経済コストを欧州に負担させる」と述べているトランプ大統領の意向に真っ向から欧州が反対する事態になれば、停戦後も空白が生じ、ウクライナを従属させるためのプロセスを淡々と進めやすいというプーチン大統領の思惑が叶ってしまう状況が生まれるのではないかと考えます。
唯一、プーチン大統領の企てを直接的に挫ける策があるとすれば、米軍のウクライナへの派遣というウルトラCの賭けだと考えますが、これはロシアに対して非常に厳しかったバイデン政権でさえ「第3次世界大戦を引き起こしかねない」と選択肢から排除したものですが、現在、その可能性を否定しないバンス副大統領と、絶対にないと断言するヘグセス国防長官の意見のずれが生じており、トランプ政権内でまだ方針が固まっていない様子もうかがえるため、これもまたプーチン大統領を利することに繋がっていくように考えられます。
ロシアのラブロフ外相は18日の協議後、「欧州各国が停戦管理のための平和維持軍をウクライナに展開するという米国の案は全く受け入れられず、NATO加盟国の軍派遣を容認することはない」と明言して明言していますし、その後、「アメリカが軍を派遣するというアイデアも荒唐無稽な話で全く考慮すべき内容でもない」と全否定して、アメリカにも欧州にも圧力をかけています。
これらを見ても、停戦協議は完全にロシアペースで進んでいることは否定できず、このままだと中身がなくても、停戦合意が実現することを重んじかねないトランプ大統領と政権がロシア側の要求を丸のみして形式だけの停戦を実現する、という地獄のようなシナリオも想定できる事態になってきているように見えます。
そうなると、トランプ大統領が退陣後、ロシアが一気に動き出し、ウクライナの属国化を進め、隙あらば周辺国にも攻撃を加えて一気に内部崩壊を誘発するような作戦(ピンポイントで侵略し、しばらく当該地を占領し、現地住民に屈辱的な危害を加え、ある日一気に撤退して、当該国政府への不満を煽って内部崩壊を誘発する工作)に出る可能性があります。
「24時間以内に、いや半年以内に」といっていたウクライナ戦争の停戦に向けたトランプ政権の行動は、下手をすると、紛争の拡大につながり、欧州との決別を決定的にし、ロシアの脅威を再燃させる恐れがあります。
(中略)
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