MAG2 NEWS MENU

#財務省解体デモ ひろゆき氏の誤解がヤバい理由。日本を不法占拠する財務省、潰せば「社会がよくなる」は天下国家の理だ(作家・元国税調査官 大村大次郎)

西村博之氏(2ちゃんねる創設者・実業家)によれば、「 #財務省解体デモ 」に集まっているのは「あまり頭のよろしくない人」たちで、彼らはデモで社会が良くなると「誤解」しているのだという。西村氏の発言によって、財務省解体論がより注目を集める結果となっているのは皮肉だが、気になるのは実際のデモの効果だ。本稿では、作家・元国税調査官の大村大次郎氏が“ひろゆき氏の大誤解”を解き明かすとともに、財務省による“日本不法占拠”の実態を告発する。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:財務省解体デモは正しい!ひろゆき氏の大誤解をただす

西村博之氏の「財務省にまつわる誤解」を解く

財務省の前で断続的に行われている「財務省解体デモ」が、参加者1000人を超える規模になったそうです。

今の日本で1000人を超えるレベルのデモというのは相当な大ニュースだと思われるのですが、案の定、忖度主義の大手マスコミはこの件についてまったく報じてきませんでした。

が、ここにきて、チラホラ報道するマスコミも出てきました。それと同時に、この財務省解体デモに関して、著名人もさまざまな発言をするようになっています。

あのひろゆき氏(編註:2ちゃんねる創設者・実業家の西村博之氏)も、YouTubeのライブ配信でこんなことを言っておりました。

「多分その、あまり頭のよろしくない人って、財務省解体デモというのをすることで社会が良くなると誤解をしてるんですよ」

「良くなりません」

「財務省を変えるのであれば、選挙で(編註:有権者に選ばれた)政治家が、財務省を解体するという法案を作らないと変わりません」

まあ、ひろゆき氏は、財務省解体デモを揶揄しているわけです。

ひろゆき氏が、財務省に忖度をしてこういう発言をしたのか、正直な感想を言っただけなのかはわかりません。

が、もし正直な感想だったとすれば、大きな誤解があると言えます。今回は、このひろゆき氏の発言の大きな誤解を解いてみたいと思います。

財務省解体デモはすでに「成功」している

まず1つ目は、財務省解体デモは決して無駄ではなく、すでに大きな効果をもたらしているということです。

「財務省を解体すべし」という主張は、これまでネットの一部では盛り上がっていたものの、国民全体でみればまったく言っていいほど知られていませんでした。

しかし、自然発生的に広がったデモは、多くの人を集めメディアにも取り上げられ、日本有数のインフルエンサーであるひろゆき氏にさえ言及されたのです。それだけでも、デモに大きな効果があったと言えるはずです。

デモに参加している人たちも、デモだけで財務省が解体されるとは思っていないでしょう。

デモをすることによって、世間に財務省の悪行を知ってもらい議論を巻き起こしたい、というのが、まず第一の目的だったはずです。この第一の目的は、見事にクリアされたと言えるでしょう。

財務省解体(デモ)で、実際に社会が良くなる

ひろゆき氏のもう1つの誤解を解いていきましょう。

ひろゆき氏は、「財務省を変えるのであれば、選挙で政治家が財務省を解体するという法案を作らないと変わりません」と言っていましたが、これはおそらく「日本の予算や税制は政治家がつくっている」と思い込んでいるのではないでしょうか?

たしかに、日本国憲法の原理原則から言えば、ひろゆき氏の言うとおりではあります。

国の法律や予算は、国会が決めるものであり、省庁というのは内閣や国会の方針に従って実務を行うだけ、ということになっているからです。

しかし現実には、それは建前にすぎません。今の日本の財務省は、憲法の原理原則から大きく逸脱して、先進国ではあり得ないような巨大な国家権力を持っているのが実状なのです。

その異常を正そうというのが財務省解体です。「予算策定権」と「徴税権」の2大権力をはじめ、財務省への過度な国家権力の集中を解消すれば、少なくとも今よりも社会が良くなるのは必然と言えます。

財務省が独占する「予算策定権」と「徴税権」の2大権力

国家には、2つの大きな権力があります。それは「予算策定権」と「徴税権」です。

国家というのは、財政予算がないと運営できません。軍事にしろ、外交にしろ、内政にしろ、財政予算があってのことです。それは、古代国家でも現代国家でも同様です。国家は、財政予算があって初めて成立するものです。

また国家予算は、その国の経済においてもっとも大きな金額を占めています。一国の経済において最大のインパクトを持っているのです。この国家予算を確保するためには税金を取り立てる、つまり徴税しなければなりません。徴税の権力を持っているからこそ、国家というのは存在しうるのです。

だから、税金を集める「徴税権」と、その税金の使途を決める「予算策定権」というのは、国家の2大権力といえます。財務省は、この国家の2大権力を2つとも持っており、これが様々な面で日本社会を悪くしています。

建前ではなく現実を見る人々が財務省解体デモに参加している

もちろん本来なら、予算は国会が決めるという建前になっています。

が、日本の法律では、国の予算は一から十まで国会で決める、という現実離れしたシステムになっており、国会議員たちにはとてもそんな実務を行う能力がありません。

そのため、予算を決める実務は、完全に財務省が握っているのです。

国家予算こそは国家権力の源泉であり、それを握っているということは、相当のパワーを持っていることになります。それに加えて税金を徴収する「徴税権」まで握っているのです。

このような巨大な権力を持つ省庁は、先進国ではあまり例がありません。

近代国家では、予算策定権と徴税権は、別々の官庁が持つことが多いのです。両方を1つの省庁が持つと、あまりに権力が大きくなりすぎるからです。

日本でも、表向きは「財務省と国税庁は別の組織」という建前になっています。しかし、国税庁長官をはじめ国税庁の幹部は、すべて財務省官僚が占めており、国税庁は完全に財務省の支配下にあるのです。

金融庁、公取委、総理秘書官、人事院も財務省の支配下!

しかも、財務省が持っている権力はそれだけではありません。

金融業界を指揮監督する「金融庁」も、財務省の支配下にあります。金融庁の幹部もまた財務省に占められているのです。

日本の商取引を全体を監視する「公正取引委員会」も、同様にトップや幹部を財務省に占められています。

さらに日本銀行の総裁復興庁事務次官の椅子も時々財務省出身者に回ってくるし、はては日本郵便の社長や副社長のポストもたびたび取っています。

はては、国際機関OECDの事務方トップである「事務次官」も2011年以降、財務省出身者に占められているのです。

また総理秘書官の中でもっとも重要なポストである筆頭秘書官は、財務省の指定席になっています。筆頭秘書官は、総理に四六時中付き添って、政策のアドバイスを行う職務です。

そのため歴代の総理は、どうしても財務省寄りの考えになっていたのです。

官邸の司令塔的役割の官房副長官補も、財務省からの出向者となっています。重要閣僚の秘書官など、すべての重要ポストは財務省が握っているのです。

また国家公務員の人事を仕切っている財務省主計局給与共済課(給料関係)、人事院給与局給与第二課(各省庁の人事)、総務省人事・恩給課(国家公務員の総合的な人事)の3つの組織も、すべて財務省が握っています。

財務省は日本を「不法占拠」している状態にある

一国の政治経済において、これほど1つの省庁に権力が集中している例は、世界を見渡しても日本の財務省しかありません。財務省の強大な権力は、世界的に見れば異常な状態なのです。

しかも財務省がこれほど大きな権力を持っていることは、法律でそう決められているわけではありません。

法律では、各省庁はおのおのが独立した機関であり、1つの省庁がほかの省庁を支配するようなことは、あってはならないことになっています。近代国家の官庁というのは、国家権力が集中しないように、いくつのも省庁に分かれているのです。

しかし、現在の財務省は、この「権力分散の法則」のまったく逆を行っています。

財務省は、省庁間の力関係を背景に、出向などの名目で職員を各省庁に送り込み、幹部ポストを独占していくことで実質的に他を支配するようになりました。それが、時を経るごとに膨れ上がり、今では日本の官庁全体を実質的に支配するようになったのです。

つまり、財務省は巨大な国家権力を「不法占拠」しているのです

現在、日本の政治経済は、国会や内閣ではなく財務省が主導するものになっています。国会や内閣の意向ではなく、財務省の意向が優先されているのです。

「消費税」を見れば明白、日本国民の貧困は財務省のせい

現在の日本の政治で、国会や国民の意向が無視され、財務省の意向ばかりが反映されているわかりやすい例として、消費税が挙げられます。

消費税は、ダイヤモンドにも生活必需品にも同じ税率を課すという、世界でも稀な悪税です。日本が衰退し格差社会になっていったのは、消費税導入以降のことなのです。

この世界の悪税である消費税は、財務省の強い意向で導入されたものです。財務省は、国民のことなどまったく考慮することなく、「安定財源の確保」というその一点のみのために、消費税を強力に推し進めたのです。消費税は、景気不景気にかかわらず、一定の税収が見込めるからです。

この消費税は、実は国民も政治家も望んでいませんでした。消費税を導入したり、税率アップをした内閣は必ず選挙で大敗してきたのです。

消費税を創設し導入したのは、自民党の竹下内閣です。竹下内閣は、消費税決定後の総選挙で大敗し、その影響で自民党は分裂。結果的に自民党は野党に下るという大打撃を受けました。

消費税の税率を3%から5%に引き上げる決定をしたのは、社会党の村山政権でした。社会党も、この後の総選挙で大敗し、壊滅状態になってしまいました。それまで社会党は長い間、野党第一党の地位を維持してきましたが、この件以降、急速に没落し、現在は、国会の議席数はわずか3となっています。

ここまで没落したのは、間違いなく消費税税率アップ時の大敗北の影響です。

消費税を5%から8%、8%から10%に引き上げる決定をしたのは、民主党の野田政権でした。野田政権もその直後の総選挙で大敗し、民主党は衰退。その後、4つに分裂し「民主党」は消滅してしまいました。

財務省と消費税に、国民は何度も「ノー」を突きつけてきた

このように、財務省の意向にしたがって消費税を導入したり、税率アップをした歴代政権政党は、いずれも壊滅に近い大打撃を受けてきました。

これはつまり、消費税について国民は何度もノーを突きつけているということです。民主主義の原理原則から見れば、消費税はそもそも導入してはならないし、ましてや税率アップなどはもってのほかだったのです。

にもかかわらず、消費税は国民の意向を無視し導入され、税率アップが繰り返されてきました。

それは、政権が変わるたびに、財務省が新しい政権を強く説き伏せて、消費税増税の方針を継続させてきたからなのです。

社会党の村山氏も民主党の野田氏も、首相になる前は、消費税に大反対していました。が、首相になったとたん、財務省から強烈に説き伏せられ、税率アップにゴーサインを出してしまったのです。

「政治家悪玉論」の誤りと「財務省黒幕論」の正しさ

本来、政治家はそもそも新税の導入や、増税をしたがらないものです。新税をつくったり増税すれば、支持率が下がるのは目に見えているからです。

なのに、なぜ政治家は財務省の意向を汲んで消費税を増税してきたかというと、「政治家が財務省に逆らえない構図」があるからに他なりません。

前述したように、財務省は国の組織の中枢部分をすべて握っています。もし財務省が本気で怒れば、行政全体が止まってしまうのです。

また国会運営についても、政治家は財務省の協力なしには行えません。それをいいことに財務省は、政治家に対し暗に「自分たちの意を汲まなければ動かない」というような脅しをかけるのです。

首相さえ財務省にコントロールされている

実際に財務省は、自分たちの意を汲まない政治家に対しては、強烈な攻撃をチラつかせます。あの安倍首相も回顧録で次のように述べています。

「予算編成を担う財務省の力は強力です」

「彼らは、自分たちの意向に従わない政権を平気で倒しに来ますから」

「財務省は外局に、国会議員の脱税などを強制調査することができる国税庁という組織も持っている」

(出典:「安倍晋三回顧録」中央公論新社)

安倍首相は、財務省の意に反し、消費税の増税時期を2回も延期しました。これほど財務省にノーを突き付けたのは、平成以降の首相では、安倍氏しかいないといえるでしょう。この安倍氏にしても、最終的には消費税の増税を承認せざるを得なかったのです。安倍首相は、財務省の恐ろしさを嫌というほど知っていたのです。

財務省解体デモは、そういうことも含めて「財務省をこのままにしておいてはダメだ」と感じた人たちの意志の表れなのです。

ひろゆき氏の言うように、財務省解体デモをしている人たちが、「あまり頭のよろしくない人たち」だとは、私はまったく思いません。

(本記事はメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2025年3月1日号「財務省解体デモは正しい!ひろゆき氏の大誤解をただす」を抜粋、再構成したものです。「“幼稚園の土地を国税が差し押さえ”の謎」「安倍元首相の甥っ子の相続税無税の件」を含む全文はご登録の上ご覧ください。初月無料です)

この記事の著者・大村大次郎さんを応援しよう

メルマガ購読で活動を支援する

※ワンクリックで簡単にお試し登録できます↑
¥330/月(税込)初月無料 毎月 1日・16日
月の途中でも全ての号が届きます

大村大次郎氏の「財務省」「消費税」関連記事

【ご案内】元国税調査官の大村大次郎氏が、事業者向けの専門記事をプラスした特別版」の有料メルマガを新創刊しました。さらに高度な情報をお楽しみください。

【関連】元国税調査官が社長に教える「税理士の実力」試験突破組と国税OB組はどちらが優秀?税務署とのパイプ(酒席)に御利益はある?

image by: 財務省Webサイト

大村大次郎この著者の記事一覧

元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授する有料メルマガ。自営業、経営者にオススメ。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 大村大次郎の本音で役に立つ税金情報 』

【著者】 大村大次郎 【月額】 初月無料!¥330(税込)/月 【発行周期】 毎月 1日・16日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け