フジ中居問題で鮮明に。日本のテレビ業界をダメにした「視聴率至上主義」「広告依存」「県域放送制度」という3つの悪弊

 

常態化した「広告主の意向ありき」という本末転倒

テレビの歴史を振り返ると、まず受像機の技術開発が先行し、それに続く形で放送コンテンツが整備されてきた。この順序は、テレビというメディアが当初から「何を伝えるか」より「どう映すか」が重視されていたことを示しており、ひいてはテレビ自体が“ブルシット・ジョブ”的性格を帯びていたのではないかという疑問を投げかける。

デヴィッド・グレーバーが提唱した「ブルシット・ジョブ」理論では、「社会的に必要とされていないうえに、従事者自身もその無意味さを感じている仕事」が現代社会に蔓延しているとされる。広告業界や企業内の管理職、官僚的な仕事がその典型例とされるが(*3)、メディア業界もまたその例外ではない。

かつては、質の高いコンテンツが視聴者を惹きつけ、その結果として広告がつくという構造が常識だった。しかし現在のテレビ業界では、まず広告主の意向があり、その枠組みに沿って番組が制作されるという「本末転倒」の状態が常態化している。

この逆転構造の背景には、テレビ局の収益の大半が広告収入に依存しているという経済的事情がある。視聴者の満足よりも、広告主の機嫌を取ることが優先される体制は、番組内容の硬直化と多様性の欠如を招いている。

結果として、番組企画は広告主の審査基準に合わせて最適化され、創造性よりも保守性が優先される。

デヴィッド・グレーバーが提唱した「ブルシット・ジョブ」理論

  • 定義:被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完全に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態
  • 特徴:雇用条件の一環として、本人はその仕事が無意味ではないと取り繕わなければならないと感じている
  • 5つの分類:
    取り巻き:誰かを偉そうに見せるためだけに存在する仕事
    脅し屋:他者を脅かすが、雇用主に完全に依存している仕事
    尻拭い:組織の欠陥を埋めるためだけに存在する仕事
    書類穴埋め人:誰も真剣に読まない書類を作成する仕事
    タスクマスター:他人への仕事の割り当てだけを行う仕事

この記事の著者・伊東森さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • フジ中居問題で鮮明に。日本のテレビ業界をダメにした「視聴率至上主義」「広告依存」「県域放送制度」という3つの悪弊
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け