フジ中居問題で鮮明に。日本のテレビ業界をダメにした「視聴率至上主義」「広告依存」「県域放送制度」という3つの悪弊

 

全国規模での情報の多様性を制限する県域放送制度

日本のテレビ放送システムの致命的弱点は選択肢のなさだ。具体的に言えば、諸外国と比較して著しく制限された状況にあり、これが日本のメディア環境における重大な弱点となっている。アメリカでは一部地域では最大で無料で100チャンネル以上、中国でも50チャンネル以上のテレビ放送を視聴できるのに対し、日本では地上波放送の選択肢が極めて限られている。

欧州についても、1980年代より衛星放送やケーブルテレビの発展により、国境を越えた多様な放送が実現していた。

日本の放送制度の特徴として、県域放送という概念がある。これは、各都道府県ごとに異なる放送局が存在し、それぞれの地域に特化したコンテンツを提供するシステムだ。この制度は地域の文化や情報を守るという観点からは一定の意義はあるものの、同時に全国規模での情報の多様性を制限する要因にもなっている。

結果として、日本の視聴者は限られたチャンネル数と情報源に依存せざるを得ない状況に置かれている(*4)。

結論として、そもそも欧米諸国では、インターネットの普及以前から多チャンネル化に情報化社会が進んでいのだ。他方、日本のメディア環境におけるこの制限は、情報の独占につながる危険性をはらんできた。だからこそ、日本の大手マスコミは「マスゴミ」なのだ。

日本のテレビ局における県域放送と放送の多様性の欠如について

  • 県域放送は、一つの都道府県の区域または二つの県の区域を併せた区域における需要に応えるための放送制度
  • 県域放送制度は、1950年代に電波三法の成立とともに確立され、地域の文化や情報を守る役割を担っている
  • しかし、この制度は同時に全国規模での情報の多様性を制限する要因にもなっている
  • 結果、日本の視聴者は、諸外国と比較して限られたチャンネル数と情報源に依存せざるを得ない状況にある
  • アメリカでは無料で100チャンネル以上、中国でも場合によるが50チャンネル以上のテレビ放送を視聴できるのに対し、日本の主要都市では地上波無料放送が7チャンネル程度に限られている
  • 日本の放送局は既にネットワークを前提として存在しており、地方の視聴者目線から見ると、放送局が県域に複数存在することで「多様性」が確保されているとは言い難い状況
  • 若年層ほどNHKよりも民放の人気が高いが、一方で民放ローカル番組の評価は芳しくないという調査結果が
  • 放送の地域性確保は重要な論点であるが、地域によって放送サービスの実態が様々であることが課題
  • 系列ネットワークの枠組みでローカル局経営を救済する制度変更により、これまで別々に放送されていた地域番組を複数放送対象地域で同一化することが認められつつあり、事実上の「県域圏」の「広域圏」化が進んでいる
  • この状況は、放送の多様性をさらに制限する可能性があり、視聴者の情報アクセスの選択肢を狭める懸念が

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引用・参考文献

(*1)吉野章夫「テレビ技術史概要と関連資料調査」国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第4集 2004年3月29日

(*2)「ラジオの歴史とラジオCM」ムサシノ広告社

(*3)Christopher Pollard「Revisiting the Spiritual Violence of BS Jobs」SAPIENS 2024年10月15日

(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2025年3月23日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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