私にやれるのか?植田総裁の胃に穴があく日銀会合2日目の試練。「利上げも地獄、金利据え置きも地獄」さあどうする

 

困難(3)海外勢が円高にベットするポジションを膨らませている

投機筋の意向を反映しやすいとされるシカゴIMMの通貨先物非商業取引を見ると、4月22日までの週で、円のネット買い越しが17万8千枚と過去最高となり、しかもこの2週間で5万枚も買い越しが膨らんでいます。次回会合での日銀の利上げを機に、円高が進むことを見込んだポジションです。

その日銀が利上げを見送ることになれば、この投機筋が巨大な円買いポジションを巻き戻す可能性があり、仮に10万枚以上のポジション整理が一気に進むと、ドル円はまた150円の円安に戻してしまう可能性があります。

これが2回目の日米交渉の直前に起きれば、交渉に少なからず影響が及ぶ恐れがあります。

ドル円は最近一時139円台まで円高が進んだ後、143円台まで戻してきています。これが日銀の金利据え置き観測報道を受けたポジションの縮小によるものなら「ガス抜き」が始まったとみられますが、むしろトランプ関税の修正期待でドルが戻した可能性もあります。

投機筋の円買いポジションが縮小していないとすれば、日銀の金利据え置きを受けたリアクションが大きくなる可能性があり要注意です。

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進むも地獄、引くも地獄の「利上げ見送り」に

このように、日銀はいわば「進むも地獄、退くも地獄」の苦しい状況にあります。

もはや会合直前で幹部が金融政策に関する発言ができない「ブラックアウト」期間に入っていますが、メディアを利用して情報を流し市場の反乱を回避するとともに、市場のスムージングが必要になってくると思います。

利上げ見送りとなっても投機筋の円売り攻勢を回避できるよう、成長見通しの下方修正は小幅にとどめ、決定会合の声明文や記者会見で引き続き利上げ継続の姿勢が変わらないことを示すことになるのではないかと思われます。

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image by: 首相官邸ホームページ, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

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プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

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