中国側が二階氏に見出した「利用価値」と親中派ネットワーク
中国にとっても二階氏は“使える存在”だった。二階氏は自民党内で少数派といえる親中議員を代表してきた。党幹事長という要職まで務めた。外交安保で強硬な意見が飛び交う中、一貫して「対話優先」「関係維持」を訴え続けた。日本政界に親中派の「錨」を打ち込んだようなものだ。必要なときには「ガス抜き役」として日本の世論をコントロールできるという算段があったかもしれない。
二階氏自身、訪中するたびに超厚遇を受けた。習近平主席の心をつかんだのは2017年の訪中だった。
日米が主導する自由貿易の枠組みである「TPP」に対抗して生まれた現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際協力首脳会議。日本政府は出席に後ろ向きだったが、自民党幹事長の二階氏は今井尚哉総理秘書官を強引に同行させて北京に向かった。多忙なスケジュールを割いて会談した習近平主席は二階氏に「古い友人」と呼びかけたという。
これほどの“特別扱い”を受けた日本の政治家は、近年ほとんど存在しない。だが、ここにこそ最大の問題が潜んでいた。二階俊博という個人と中国との蜜月が、国家間外交に取って代わるようになったのだ。
裏を返せば、日本の国家戦略に関係なく、特定の個人ルートで中国が日本政治に影響を及ぼす可能性を生み出したということである。
中国政府は日本で政財界の親中派ネットワークづくりを粘り強く進めてきたとされるが、二階氏はその“窓口”として、極めて都合が良かったに違いない。
“親中派”という言葉は、日本ではもっぱら国政レベルで語られることが多い。だが、実は本当に中国が力を入れていたのは「地方」だった。政治的な抵抗が少なく、浸透の余地が大きいからだ。
「文化交流」や「地方協力」を掲げ、二階氏の地元とも深いつながりを持つ中国の民間団体も、その主要任務は「中国の対外政策に理解ある人物」を各国で育成・支援することにあるとされる。(次ページに続く)









