「氷河期世代もギリギリ逃げ切れますよ詐欺」でしかない支援策の大ウソ
もう一つ、「今、この時期に氷河期対策を持ち出す」ことの愚かさとして、「逃げ切りの連鎖」という問題があります。
どういうことかというと、戦後80年にわたって、世代間の富の移転に関しては次のような構造が連鎖していました。
「戦前世代はロクな年金制度がなかったので年金の積立もしていないし、敗戦で旧日本円は紙くずになった。だから、彼らが老後を迎える際には、年金を下の世代が支えた。ちょうど高度成長や安定成長があったので、団塊など下の世代は支えることができたで、戦前世代は下の世代のカネで逃げ切った」
「団塊世代は、上の世代を支えたが、高度成長と安定成長を享受し、また年金は下の世代に支えてもらって逃げ切った」
「谷間の世代も、まだ日本経済には繁栄の遺産があったのでこれを享受し、年金はまだ破綻していないので、下の世代に支えてもらって逃げ切りつつある」
まさに世代間連鎖です。本当は、どこかの時点、例えば日本経済が絶頂期にあった80年代などに年金を「賦課方式」から各世代による「自分の世代の積立方式」に変更すべきでした。厚生年金と国民年金の「上方への」一本化もすべきでした。
ですが、政官界も財界もこの改革をサボってきたのです。そして今になって、再びこの連鎖を進める話をしようとしています。現在の議論としては、
「人手不足やグローバルな人件費の共通化などで、今の若手は初任給がアップしている。支払い能力が出てきたのだから、資金を氷河期に移転して、何とか氷河期もギリギリ逃げ切れるようにできないか?」
というストーリーがあるわけですが、これもまた世代間の搾取の連鎖であり、上の世代を何とか「逃げ切らせる」という発想法に他なりません。
政官界はまったく懲りていないというか、戦後80年同じようにインチキな「世代間のねずみ講」をやった経験で、再び似たような姑息なことを考えているわけです。(次ページに続く)









