イーロン・マスクはどこへ消えた?トランプに成り代わりアメリカ再構築のため手腕を発揮した“切り込み隊長”の行方

 

「新たな自治体」となるスペースXのロケット発射基地

そのマスク氏に関する最新の話題の一つは、メキシコとの国境に近く、メキシコ湾(アメリカ湾)に面したテキサス州キャメロン郡にあるスペースX社のロケット発射基地「スターベース(Starbase)」が、このたび新たな自治体となることが決まったことです(図1参照)。以下はそれを喜ぶマスク氏のXへのポストです。

https://x.com/elonmusk/status/1918834940264784009

マスク氏は、4年以上前から、もともと「ボカ・チカ・ビーチ & ビレッジ(Boca Chica beach and village)」と呼ばれていたスペースX本社やロケットの打ち上げ施設がある一帯約1.6平方キロメートルのエリアを新たな「市」として編入するための取り組みを行ってきました。

図1:Starbaseのロケーション(グーグルマップより)

そして5月3日に行われた住民投票では、賛成212票、反対6票という圧倒的多数で新たな市の設立が承認されました。この区域には約500人の住民がいますが、その大半がスペースXの従業員とその家族たちなので当然の帰結ともいえます。キャメロン郡当局も、スペースXとスターベースがこの地域の経済発展の原動力になっていることを高く評価しています。

企業城下町としてスペースX主導の体制が整ったスターベース市

住民たちは、新市の市長および2名のコミッショナーとして、いずれもスペースXの社員である3名を選出しました。市長にはスペースX副社長のボビー・ピーデン(Bobby Peden)氏が選ばれましたが、他の2名のコミッショナーとともに無投票で決まりました。これにより、スターべース市の市政は、事実上の「企業城下町」としてスペースX主導の体制が整った形になります。

今後この企業城下町スターベース市が発展すれば、製造業の国内回帰を目指すトランプ大統領にとっても悪い話ではありません。宇宙開発事業による米国復活を担う希望の地としてアピールされることになるでしょう。

スペースXとしては、都市計画、土地利用の規制、インフラ整備、公共サービスの運営などを新たな市の管轄下に置き、同社がこの地で宇宙開発事業を推進する上での自由度を高めることが目的です。たとえば、これまでキャメロン郡の承認を都度必要としていたロケット打ち上げに伴うビーチの閉鎖などについても、スターベース市の自治権によって市の判断で行うことが出来るようになる可能性があります。

しかしながら、こうした新市への権限移譲にはテキサス州議会の承認が必要とされ、今のところ、スペースXの経済効果を認めている郡の当局者でも、このような郡から市への権限移譲には慎重なようです。理由の一つとしては、一部の地元住民や活動家のグループが、スペースXのロケット関連施設や同社が掲げる「火星へのゲートウェイ」という構想に対し、環境面での懸念を表明して反対しているという背景があります。

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