プーチンにも習近平にもナメられた米トランプの右往左往。レガシーなど何も残せぬ無策な「裸の王様」の保身とエゴ

 

「目立ってなんぼ」のアメリカ政府が繰り返しかねない失敗

これに対してゼレンスキー大統領はプーチン大統領との直接協議を呼び掛けておりますが、開戦直後にゼレンスキー大統領は「プーチン大統領を交渉相手とはしない」という大統領令を通しており、焦りからか、それともただのパフォーマンスかは別にして、ここにきて大いなる自己矛盾を露呈し、見事にプーチン大統領にはスルーされるという情けない状況に陥っています。

プーチン大統領は一言も自らがイスタンブール入りするとは言っていませんし、ましてやゼレンスキー大統領がウクライナを代表するのは法的に正当性がないという議論を展開していることから、ゼレンスキー大統領との首脳会談が実現することは、ロシア優位の戦況が継続する限りはあり得ないと言わざるを得ないでしょう。

実際にロシアは呼びかけを無視し、メディンスキー大統領補佐官をヘッドに据え、そこに元駐日大使で現在外務次官の一人として旧ソ連諸国の対応の責任者を務めるガルージン氏が加わった布陣を取ることで、ウクライナをロシアと対等の位置に置かず、あくまでも属国的な扱いしかしていないことを匂わせているように感じます。

「交渉を行って合意を元に初めて停戦が行われる」という姿勢を崩さないロシアと、「まずは停戦して、その上で交渉すべき」とするウクライナと欧州各国の立場は根本的にずれており、恐らくイスタンブールでの直接協議は不発に終わるものと考えます。

そこにさらに水を差しそうなのが、“直接協議”と呼ばれているにもかかわらず、参加を表明して憚らないアメリカの姿勢です。

実際にイスタンブール入りするのは、アンタルヤでのNATO外相会議に出席するルビオ国務長官ですが、プーチン大統領が15日の直接協議を提案した際には、トランプ大統領自身の「求められれば参加する」と、まるで当事者であるかのように振舞い、見事にロシア側にスルーされるという扱いを受けています。

今回、協議においてアメリカが参加することをロシアが受け入れるかどうかという点も不透明ですが、“直接協議”においてアメリカが何らかの口出しをし、かつロシアを非難するようなことがあれば一気に仲介者としてのステータスを失い、“停戦”の糸口ときっかけを完全に失う危険性があります。

「目立ってなんぼのアメリカ政府」ですから、恐らくその失敗の轍を踏むのではないかと感じています。

(中略)

調停グループ内の専門家のみならず、いろいろと意見交換する戦略担当の皆さんも、もし今後、核戦争が起きる場合には、それはイスラエルを巻き込んだ中東発か、インドとパキスタンという核保有国同士の戦争になり、それが終わりなき第3次世界大戦に発展するというシナリオが現実になるのではないかと主張するケースが増えてきています。

この最悪の事態に対する懸念が高まり、確度が高まっていると感じる背景にあるのは、戦争の解決や緊張の緩和というglobal causeよりも自身のレガシーと政治基盤の死守を優先するリーダーたちのエゴと無策という現実です。

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