消滅の危機に瀕する全世界の人口の半分と7割の経済を抱く地域
景気のいいことを繰り返す欧州のリーダーたちは、すでに国内での支持を失い、次の選挙では消えかねない状況で、他力本願で起死回生の一発を狙い、支持率の回復を願っています。マクロン大統領は、国内経済の不調と極右の躍進を受けて、すでに国内での影響力は失っています。
イギリスのスターマー政権も保守党政権を下野させた後、何ら目新しい策を講じてはおらず、ウクライナに対しても、中東和平に対しても、何ら役に立てていません。
欧州のリーダーを自認するドイツは、徐々にその影響力と、欧州に対する関心を失い、新しく誕生した大連立の政権も内向きの印象が強く、外交面で何らかのクリエイティブな解決を主導できるイメージは抱けませんし、すでにドイツの有権者の多くの声は、ウクライナから手を退くべきというものであるがゆえに、too muchな対ウクライナコミットメントは支持を減らし、おまけにいずれ訪れる“戦後”において、ロシアからのエネルギー共有に代表される“特別な関係の回復”を阻害するものと考えられるため、実質的に何か効果的な対策が取れるとは考えづらいのが実情です。
トランプ大統領はすでに国内での支持率が低下の一途を辿っており、焦りもあって外交的な成果を多方面で得ようと躍起になっていますが、プーチン大統領には手玉に取られ、習近平国家主席やネタニエフ首相には利用され、搾り取られるだけ絞られて、結果的に何も残せないという可能性が高まっています。
来秋の中間選挙で圧勝して、自らに対する訴追を免れるため“だけ”に動いていますが、そのために大きな妥協を安易にしかねず、それが混乱極まる国際情勢に大きな損失を与えかねないと懸念せざるを得ない状況が見えてきています。
当事者と市民を完全に無視したBig powersのエゴと歴史的な対立によって、解決できたはずの問題は状況が悪化し、さらなる悲劇を作り出すだけでなく、下手をすると、人類の破滅をまねく取り返しのつかない状況になる危険性も出てきました。
ウクライナとその人々は見捨てられ、中東では存亡を賭けた戦いが繰り広げられ、土地と故郷という人々の帰属意識を利用した歴史的戦いがカシミール地方発で起こって、それがアジア全域に拡大し、もし中国を直接的に巻き込むような事態が出てきたら、全世界の半分の人口と7割に達する経済を抱く地域が消滅することも、ただの絵空事ではなくなります。
この手の終末論に与する気はないのですが、いろいろな案件に携わり、多方面から同様の懸念が挙がってくることが多くなってくると、ちょっと気弱になりそうな今日この頃です。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年5月16日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ
image by: Joey Sussman / Shutterstock.com









