国益のためウクライナとNATOを見限ったトランプ
結局のところ、ウクライナ戦争は本当に終結に向かっているのか、それとも依然として目途が立たない状況にあるのか、という情勢判断ですが、私は、今回加筆したその後の一連の動きを踏まえても、やはり間違いなく終結に向かっていると捉えています。
トランプ氏にとって、SNSで発信したメッセージはまさに本音であり、バイデン政権やNATOが始めたこの馬鹿げた戦争を一刻も早く終わらせて、ロシアを敵国扱いしてきた従来の立ち位置を180度転換し、今後は両国の友好関係を強化しながら、経済面での利益を最大化していくつもりなのだと思います。
そのためには、ここで戦争終結に向けた仲介役から身を引き、後は当事者同士に任せると宣言した上で、ウクライナへの軍事支援を停止し、同時にロシアへの経済制裁も解除することが、最も有効な手段だと判断したのではないでしょうか。いわば、米国の中長期的な国益を考えてロシア側に立ち、ウクライナやNATOを見限ったということです。
「見限った」というと言葉がやや強過ぎるかもしれませんが、既に戦争に負けていて欧米の支援なしでは何もできないにもかかわらず、あたかも勝っている側であるかのようなゼレンスキー氏の終始強気な姿勢に辟易しているということもあるだろうと思います。たとえロシア側に有利な形であっても、戦争が終われば、ウクライナの一般国民が受ける戦禍も終わります。
ロシア側からしても、すでに実質的に勝利しているこの戦争を、あえて急いで終わらせる必要はありません。米国の支援を失ったウクライナがいずれ無条件降伏するのを待てば良いわけで、遠からずこの戦争をロシアにとって圧倒的に有利な形で終わらせることが出来ます。
本音では戦争継続を望んでいるゼレンスキー氏や、英国、フランス、ドイツ、ポーランドなどの国々からするとたまったものではありませんが、米国が彼らを見限って介入を止めてしまえば、もはや彼らには打つ手がなくなるのです。
(本記事は『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~ 』2025年5月23日号の一部抜粋です。このつづきに興味をお持ちの方はぜひご登録ください)
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