トランプへ報告せずにシベリア奇襲。プーチンを激怒させたゼレンスキーが自ら摘んだウクライナ戦争「停戦の芽」

 

「誰も中国の意向を無視することはできない」という現実

2014年のクリミア半島の一方的な編入後、欧米によって国際社会からの孤立が深まっていますが、皮肉なことに、2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、プーチン大統領のロシアを再び世界のパワーハウスに押し上げ、中国と共に、国家資本主義体制の拡がりを後押しし、“無視できない存在”として世界に再度君臨しています。

アフリカでの武力衝突に政治・軍事的な影響力を駆使し、中東の安定と不安定化の背後(シリア、イランなど)に常に存在していますし、非難が拡大しつつも、国連安全保障理事会の常任理事国という“特権”を存分に生かして、国際社会のパワーハウスとして振舞っています。

そして中国は著しい経済発展により、アジア太平洋地域への野心に火が付き、習近平国家主席の指導の下、アメリカに追いつき追い越せという戦略の下、着実に力を蓄え、2010年代以降は決して無視できない大国の地位を築きました。

中国については、台湾という例外を除けば、軍事的な野心は抱えておらず、アジア太平洋地域での圧倒的な覇権を確立できればそれで十分とする戦略を立てています。

ただこの方針はアメリカが推し進めるアジア太平洋地域でのプレゼンスの維持という戦略と見事に衝突するため、自ずと米中の対立軸が太平洋上に築かれることになりますし、アジア太平洋地域でプレゼンスを高めるインドや、経済発展著しいフィリピンやベトナムなどの東南アジア諸国との間に緊張が高まることに繋がっていますが、確実なのは「だれも中国の意向を無視することはできない」という現実です。

そして現行の国際紛争のすべての背後に、必ずこの3か国が存在します。

ロシア・ウクライナ戦争では、ロシアは当事者ですのでもちろんそこに絡んでいますが、ロシアの盟友として中国もどっぷりつかっていますし、ウクライナ側にアメリカがついてきたことと、最近は仲介役を自任していることで、米ロ中のそろい踏みとなる紛争になっています(つまり、ウクライナや欧州各国の存在や要求は、超大国主導の国際情勢においては、ほのかなスパイス程度の役割しか果たしていないと言えるかもしれません)。

ガザ紛争については、3カ国中最も目立つのはアメリカ政府の存在ですが、ハマスを含む14のパレスチナにおける諸勢力を纏め、United Palestineを作ったのは中国政府の仲介によるものですし、アサド政権下で強化されていた反イスラエル・親ロ方針によって地域における軍事プレゼンスをロシアは築き、今でもイスラエルの隣国レバノン、追い出されたと思われていたシリアなどでもロシアの影響力は存在します。

米ロ中が戦火を交えてはいませんが、対峙しているのがイランを巡る事態です。

オバマ政権下でイラン核合意が成立した際にも、ロシアと中国は協議の当事国であり、トランプ第1政権下でアメリカが離脱した後も、協議・合意の当事国として影響力を駆使しています。イランは、高まるアメリカとイスラエルからの圧力に対抗すべく、中ロを戦略的なパートナーとして迎え入れ、3か国の結びつきは非常に強くなっています。

知っての通り、ロシアのウクライナでの作戦をイランは支援しています。さらに、中国の仲介で、イランとサウジアラビア王国との間で外交的な関係修復が行われ、ペルシャ半島からパレスチナに至るまでのエリアに対して中国の影響力が拡大し、今後、ガザ地区はもちろん、中東地域の安全・安定に対しても無視できない存在です(そして今、米ロ首脳会談の内容の中に、トランプ大統領がプーチン大統領にイランとの協議に参加してほしい旨、依頼したという情報もあります)。

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