在外中国人の呼び戻しを開始した習近平政権
なかなか終わりの見えない中東での緊張とロシア・ウクライナ戦争ですが、両者に意外にも影響力を持っているのが、3つ目の超大国中国の存在です。
ロシアについては、いくらイランや北朝鮮が挙ってロシアに貸しを作ったとしても、ロシアから軍事的な見返りをたくさんもらえても、ロシアに対して停戦を迫るようなことはできません。
しかし、中国については、ロシアによるウクライナへの侵攻直後から、ロシアへの直接的な軍事支援はしていなくとも(間接的には迂回支援を多数行っている模様)、習近平国家主席はプーチン大統領に耳の痛いことも伝えられるだけの地位を確立しています。
それがはっきりしたのが、今年の対独戦勝記念式典・パレードの際の、プーチン大統領から習主席に対する格違いの扱いで、経済的にも軍事的にも、そして外交面でも、ロシアにとって中国は不可欠のパートナーであるという意識が見えてきます。
ウクライナに対しても、戦後復興にあたって中国との経済的な結びつきは不可欠であり、これまで様々な国々に対して不満を並べてきたゼレンスキー大統領でさえ、習近平国家主席には不平不満をぶつけたり、やり玉にあげたりできずにいます。
これは、面子を重んじる中国流のスタイルを理解しているという評価をすることもできますが、それよりは経済的なつながりと、プーチン大統領が習近平国家主席の言うことには耳を貸すということに賭けているように見えます。
当の中国はロシア・ウクライナの戦争に直接的に巻き込まれることは絶対に避けたいと願い、当初から話し合いによる解決の必要性を解き、かつ望めば仲介の労を担うとまで言い、一時は停戦案まで提示したこともありましたが、中国に功をさらわれることを恐れた欧米諸国からの横やりが入り、不発に終わっています。
しかし、中国政府関係者によると「いつでも話し合いの仲介をする」というオファーはテーブルに載せられたままであるとのことで、トランプ仲介が停止された後、何らかの形で復活してくる可能性はあると考えます。
ただ、現時点では、即時停戦が望ましいという姿勢に変わりはないものの、ロシア案件が終われば、欧米諸国は挙って中国叩きに勤しむとの危機感があり、それが中国の掲げる国家的なプランを狂わせることを懸念して、現在のところ、あまり積極的にロシア・ウクライナ戦争の解決に手を出そうとしていないように感じます。
中国の掲げるプランとは、以前、米国内でペンタゴンが掲げた「中国は2026年までにアジア太平洋地域において、アメリカの持つ軍事力を凌駕することになる」という計画であり、それはまた、必要であれば台湾を武力によって併合するための基盤整備が完了するという計画でもあると考えられます。
今のところ、中国からアクティブに台湾に対する軍事行動を仕掛けることはないとのことですが、外部勢力が(欧米諸国と日本?!)台湾をダシに、中国のsphere of influenceを侵そうとする行動に出るなら十分に受けて立つだけの力を備えることに勤しんでいるようです。
コロナ対応などで若干の遅れが生じたという専門家もいますが、それでもほぼ体制は整いつつあるというように聞いています。
その体制が整った暁には、すでにロシアの教訓から、どのレベルで誰がどのように対中攻撃を仕掛けてくるか(経済制裁などを含む)の研究・分析と、対策の立案が完成し、かつ有事の際に十分に戦える軍事力も築かれていると思われますので(そして気のせいか、ここ数カ月の間に、在外の中国人が中国に戻されているようです)、その段階に達した際に、ロシアへの何らかの働きかけがあるかもしれません。
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