トランプへ報告せずにシベリア奇襲。プーチンを激怒させたゼレンスキーが自ら摘んだウクライナ戦争「停戦の芽」

 

東アフリカでの内戦の激化にも加担する新旧3超大国

ミャンマー情勢からは、基本、アメリカは離脱しているように見えますが、中国とロシアの影響力の高まりを受けて特使を任命する形で対応しています。

ただ、トランプ政権下では、これまでのところ、さほどプライオリティは高いとは言え、状況の変化に迅速に対応するためにローキーで待機しているに過ぎません。

インド・パキスタン間のカシミール地方を巡る緊張の背後にも、今度は準当事国として中国がおり、これまでのところは、いらぬ核戦争の緊張を高めないようにと、事態の鎮静化に奔走していますが、しっかりと背後に控え、パキスタンに軍事・経済支援を拡充することで、ライバルであるインドにメッセージを送っています。

ロシアはインド・パキスタン双方と関係がありますが、今回はあえて中国への配慮もあり、積極的にコミットはしていませんが、国連安保理などの外交の舞台では、しっかりと存在感を発揮しています。

アメリカは、インドとパキスタンの緊張が高まった際にルビオ国務長官が“仲介”に乗り出し、地域の不安定化が進まないようにAmerica watches you的な圧力を両国(と中国)にかけて存在感を示しています。

例を挙げればキリがありませんが、内戦が激化するスーダンでも、この3超大国は勢ぞろいし、対立する勢力の背後に控えて、遠く東アフリカで代理戦争・勢力争いを繰り広げています。現時点までは、問題の解決に貢献するのではなく、残念ながら、内戦の激化に加担していると思われます。

これまではこのような“超大国All in”な状況で国際紛争が進んでいたため、ほんの5年ほど前まではまだ、ここに英仏を交えた国連安保理P5(常任理事国)の国々が、表面的には外交戦を続け対立していても、安保理の下に位置するP5しか入れない部屋に籠って、何とか落としどころを探るという慣行が成り立ち、紛争が世界戦争に発展する危険性を帯びないように調整され、停戦が成り立っていました(安保理の議論を担当させていただいたことで、このお部屋に入れていただくことができ、「ああ、国際情勢はこうやって決められていくのか…」と非常に勉強になり、その後、紛争調停を担当する際に非常に役立ちました)。

この調整システムが今、全く機能しないのが現実です。

常任理事国でもある英仏については、外交力はあるものの、単純に相対的な影響力の低下が理由として挙げられると思いますが、問題解決のために主導権を取るほどの力は存在しません。

米ロ中については、それぞれが主導権および外交的影響力の拡大のための争いに興じ、国際的な平和と安定のための調整や協調よりも、自陣営の利益の追求に重きをおくようになったことで、紛争の落としどころを互いに探るのではなく、紛争を長引かせてでも、自国陣営の利益を最大化できるタイミングを探るという、MediatorからPlayerへのP5の役割の格下げと呼んでいい状況が起きています。

これまでと変わらないのは、アメリカ政府のイスラエルへの肩入れの姿勢ですが、それでも少し前までの安保理では暗黙の了解で、アメリカの拒否権発動のレッドラインになるからと、イスラエルに対する非難決議や安保理決議は避けて、代わりに非難声明に止めてきたところが、アメリカが拒否権発動を行うことは変わらないとしても、安保理の場で、アメリカの国連大使がイスラエルの非人道的行為に対して苦言を呈するという異例の事態が見られるようになってきました。

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