今こそ財界とまともな大学が連携し立ち上げるべきシステム
仕事は専門スキルを持った人がそのスキルを活かす場所です。そして、専門スキルの中にはエンジニアとか、経理、法務などがあるように、品質管理とか進捗管理という分野があるのです。
例えば、営業チームには営業におけるリーダーシップという専門スキルを持った人物が責任者として配置されるべきです。それはクライアントとのコミュニケーションや、業界全体の理解、個々人の個性の把握と適切なアドバイス力、そして上位の経営層へのプレゼン力や、製造部門との交渉力などのスキルで構成されます。
そこには過去の営業成績が反映する部分は極めて限られています。そして、時代の変化に応じて対面営業からデータ中心のオンライン営業へ、説得営業からニーズ把握営業へと変化しているのであれば、過去の成功体験はむしろ邪魔になります。
更に言えば、経営トップもそうです。経営トップを外部から招聘すると言うと、いわゆる一過性のリストラや、テコ入れを派手なパフォーマンスでやろうとする「プロ経営者」のようなイメージがあります。ですが、そうした一過性の対応ではなく、一般論として「2025年の現在において激しく変わる内外環境の中で」その会社に最善の判断を下し続ける人材というのは、「その会社の過去を知る」人物ではありません。
まして「過去の全く環境の異なる状況での成功体験」だけが、自分の権威や権力の源泉だと勘違いしているような人物は間違いなく、その会社にとって有害です。今は、そのような時代なのです。
管理職や経営者は「ご褒美」として昇進させるポジションではありません。また、「過去の成功体験」は現在から未来における経営や管理スキルを保障するものでは「全くない」のです。
だからといって、現場も技術も知らない教授たちが粗製乱造するようなMBAなどが横行するのも困ります。いまこそ、財界とまともな大学が連携して、即戦力になるようなMBA(経営学修士)のコースなり、その簡易版をしっかり立ち上げて、有能な管理スキル、経営スキルをもった人材を育成する必要があると思います。
バブル崩壊以降の35年にわたって、日本経済が超長期間の衰退を続けたのには、この「経営者、管理者」に不適切な人材を充て続けた失敗も大きな要因だったと思います。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2025年7月15日号「管理職への『昇進』というオワコン」の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週のメインコンテンツ「日本の安全保障の『かたち』を考える」や人気連載「フラッシュバック80」、読者Q&Aコーナー(任天堂エコノミーについて)もすぐに読めます。
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