死者5万3,000人のうち83.2%が民間人というガザの異常
さて、話は変わって8月21日、イギリスの「ガーディアン紙」が驚くべきスクープを報じました。同紙が、ヘブライ語の「ローカルコール紙」、イスラエル・パレスチナの「+972」誌との共同調査で入手したイスラエル軍の機密データによると、2023年10月に現在の戦争が始まってから今年5月までに、イスラエル軍がガザで殺害したハマス戦闘員の総数が「約8,900人」だったというのです。
今年5月までに、イスラエル軍によって殺害されたガザのパレスチナ人は、少なくとも5万3,000人だと言われています。今だに崩れたガレキの下に放置されたままの遺体が1万人とも2万人とも推測されているため、独自調査をしたロンドン大学では「7万人超」と見積もった論文を公表しています。
しかし、そうした未発見の遺体は数に入れず、確実に遺体が確認された5万3,000人という死者数を母数としても、イスラエル軍が約8,900人と把握しているハマス戦闘員の割合はわずか16.8%であり、残りの83.2%、4万4,000人超は、子どもや女性やお年寄りなどの民間人だったのです。
紛争問題の専門家によると、1989年以降の戦争や紛争で、民間人の死者数が戦闘員の死者数を上回ったのは「スレブレニツァ包囲戦」「ルワンダ虐殺」「2022年のマリウポリ包囲戦」の3例だけだそうです。
そして、死者5万3,000人のうち4万4,000人超が民間人というガザの異常な数字は、過去に例を見ないといいます。さらには「民間人への無差別虐殺」が国際社会から批判されているシリアやスーダンの内戦よりも、ガザのほうが民間人の死亡率が高いのです。
イギリスの大学「ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス」でグローバル・ガバナンスを専門とするメアリー・カルドール教授によると、イスラエルのネタニヤフ首相の目的は「ガザの領土支配」であり、そのためには「民間人の殺害」が必須とのこと。
つまり、ネタニヤフ首相が「ハマスが隠れている」という大義名分で繰り返して来た民間施設への空爆は、ハマスの有無に関わらず「民間人の殺害」が目的だった可能性が高いのです。
そう考えれば、死者のうち83.2%が民間人という異常な数字も、ガザの現状を世界へ報じ続ける報道関係者の暗殺も、すべてのツジツマが合って来るのです。そして、ネタニヤフ首相がやる気マンマンで続けて来たジェノサイドが、どこからどう見ても戦争犯罪であることの証明となるのです。
(『きっこのメルマガ』2025年8月27日号より一部抜粋・文中敬称略)
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