独裁者プーチンとの「ビジネス拡大」が目的。米トランプが「和平」に乗り出した“アメリカファースト”すぎる理由

 

調停の現場に流れる「欧州は口出しするな」という空気

ではプーチン大統領から非難の対象となった欧州各国の反応はどうでしょうか?

予想通り対ロ非難を繰り返していますが、「じゃあ、それに対してどうするのか?」という具体的な答えは見当たりません。

NATOのルッテ事務総長は「ロシア、特にプーチン大統領が発言するたびに反応はしないが、ロシアがアメリカを通じてウクライナに押し付けようとしている内容は、NATOの総意ではない」と述べるだけですし、EUのフォンデアライデン委員長については欧州の一枚岩での対応を謳い、「欧州はロシアの脅しに屈することは無いし、正義を貫く」と発言していますが、ここでもまた具体的な動きは見られません。

唯一、controversialな反応を見せたのがドイツのメルツ政権で、以前から予定していたイスラエルからの防空システムの購入と導入を発表し、ロシアからの来るべき攻撃に対応する方針を明らかにしていますが、その発表の際、「ロシアによる欧州への攻撃は、今後はシナリオ上のお話しではなく、近年中に起こる可能性が高い現実の脅威である」との認識を示していますが、“ウクライナ”への支援の継続については明言を避けているように見えます。

今後、ウクライナの命運は「アメリカによるコミットの本気度合い」と「ウクライナ国内政治情勢の行方」にかかっていると思われますが、今後、早急に和平をもたらすためには、ロシアからの脅威に直接さらされている欧州各国が一旦「絶対に欧州も中心的な役割を果たさなくてはならない」というプライドに似た思いを横に置き、ウクライナの背後に控えてウクライナの交渉パワーの拠り所になる必要があると考えます。

仲介や調停に係る協議に臨席して感じることは、大事なことが話し合われ、何とか落としどころが探られている際に横やりを入れて議論をsquare one(振り出し)に戻すのが欧州各国の特徴で、アメリカやウクライナ、NATOの非欧州メンバーを苛立たせることが多く、表立っては言いませんが、「いろいろと口を挟み、正義や公平性を説くのは結構だが、その実施のために何も行わないし、いざという時に振り返ってもそばにはいないことが多い。何もしないなら、口出しはしないでもらいたい」という空気が流れています。

「この戦争を止めてその後どうしたいのか?」

その答えをロシアもウクライナもそれぞれに鮮明に描き、そのためのプロセスをちゃんと考えられているのか?そのプラン・プロセスを実行するために、他の協力国がそれぞれに何をどういつまでに行うことが求められるのか?そのためにはどれほどの時間とお金がかかるのか?

その話し合い・協議が進まず、具体的な像・ゴールが見えない中、4度目の厳しい冬がロシアとウクライナを襲い、終わりの見えない戦争はまだまだ続きそうです。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

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