静観を決め込んできた中国が発した「ネタニヤフ批判」
アラブ諸国の親玉といってもいいサウジアラビア王国についいては、MBS皇太子自ら「パレスチナ国家の樹立なしにアブラハム合意はない」と明言し、「もしイスラエルが、いかなる理由があったとしても、サウジアラビア王国の領土内で軍事行動を取るようなことがあれば、サウジアラビア王国はイスラエルに報復することを厭わない」とこれまでにない強い口調と内容で語っています。
それはエジプト、UAE、ヨルダン、カタールなどにも伝播し、外交的にサウジアラビア王国と“和解”したトルコやイランもこの輪に加わっています。
拡大アラブ・イスラム教国の絆が反イスラエルで固まってきているわけですが、親米のはずのサウジアラビア王国やUAEが挙ってアメリカの意思に反する行動を取ることは、トランプ大統領にとっては思いもよらない誤算であり、早くもガザ和平案の段階的実施に限りなく赤信号に近い黄信号がともっている事態になっています。
このような事態を引き起こしている原因の一つが、和平に乗り出したトランプ大統領の和平に対する“軸”の不在です。
イスラエルに寄り添う姿勢を鮮明にしつづけていることも理由として挙げられますが、「停戦が休戦や終戦に移行した後、ガザ地区をどのように復興させるのか?」や「懸案となっているパレスチナ国家の樹立についてはどのように進めるのか?そもそも計画に含まれるのか?」、「ハマスの扱いはどうするのか?」といった内容や、「拭えないネタニエフ首相とイスラエル政府・軍による対ガザ市民のジェノサイドや、レバノンやシリアなど周辺諸国への攻撃の責任についてはどうするのか?」という“方針”が先送りにされ、それらすべてを平和評議会において協議するとされているのは、カタールの交渉担当曰く、「限りなく不透明であり、実際には何ら具体的な案がないと考えざるを得ない」という評価に繋がり、それがアラブ諸国の不信を強めていると考えられます。
その不信感が今、反ネタニエフ首相の輪に繋がっています。アラブ諸国は挙ってICCの勧告を盾に“ネタニエフ首相の逮捕”について明言していますし、アラブ諸国と思いを同じくする非アラブ・イスラム諸国(インドネシア、マレーシア、トルコ、アゼルバイジャンなど)もネタニエフ首相の逮捕について言及しています。
そしてそれらの国々の後ろ盾となっている中国も、これまで静観を決めていたはずが、ここにきて「イスラエル政府、特にネタニエフ首相の行いは看過できるものではなく、ICCの勧告に従うべきだと考える」と批判的な意見を表明し、アラブ・イスラム諸国との“連帯”を図っています(ちなみにパレスチナ国家の樹立については、1988年にパレスチナを国家承認しており、最近では北京宣言により、パレスチナ内部の争いを仲介し、和解に結び付けており、パレスチナに対して大きな影響力を持っています。余談ですが、パレスチナも中国の「One China」を国際的に支持しており、このことが、台湾政府がイスラエル寄りの姿勢を取るという、なんとも言えない外交的ねじれ現象を生み出す原因になっています)。
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