米国の強欲が世界を破滅させた。第二次世界大戦を引き起こしヒトラーを誕生させた「最悪な関税政策」の不都合な真実

 

アメリカの高関税でもっとも打撃を受けたのはドイツ

第一次大戦後のアメリカの高関税政策で、もっとも打撃を受けたのはドイツでした。ドイツは、第一次世界大戦で英米仏の連合国側と戦って敗北しています。そして講和条約としてベルサイユ条約が締結されます。このベルサイユ条約こそが、第一次大戦後のドイツを絶望にたたき落とし、ナチスが生じた要因でもあるのです。

ベルサイユ条約は、ドイツにとって過酷なものでした。第一次大戦の責任は一方的にドイツにあると規定され、ドイツは連合諸国が受けた損害を賠償しなければならない、とされたのです。植民地はすべて取り上げられ、人口の10%を失い、領土の13.5%、農耕地の15%、鉄鉱石の鉱床の75%を失いました。この結果、ドイツ鉄鋼生産量は戦前の37.5%にまで落ち込みました。

賠償金は、およそ330億ドル。ドイツの税収の十数年分というめちゃくちゃなものでした。今の日本でいうならば、1000兆円以上の賠償金を課せられることになります。

ドイツは何度も何度も旧連合国側に、妥当な額の算出を求めました。このままでは絶対に払うことは不可能なので、専門家がドイツの国力を計算して、支払い可能な額を出してくれ、と。イギリスの経済学者ケインズなども、「もしドイツがこれほどの賠償金を払うということは、桁外れの工業製品輸出をしないと不可能であり、万が一もしドイツがそれを可能にしたならば、そのときはイギリスの工業製品が壊滅しているだろう」というようなことを言い、賠償金の減額を提言しました。ベルサイユ条約は、あまりに過酷だったので後に何度か修正されましたが、実質的な負担はそれほど変わりませんでした。

ハイパーインフレと大量失業

このベルサイユ条約のため、第一次世界大戦後、ドイツ経済は崩壊に陥りました。戦争で産業が疲弊した中で、莫大な賠償金を課せられたドイツ政府は、企業に対して特別税、相続税、ぜいたく品への課税などありとあらゆる課税をしましたが、追いつきませんでした。仕方なく紙幣を増刷することでその難を逃れようとしました。しかも、そういう時に、フランスがルールを占領するという事態が起きたのです。

そのため1922年、ドイツの通貨の価値は急暴落し、天文学的なインフレーションが生じました。歴史の教科書にたびたび登場するので、ご記憶の方も多いでしょう。たった一斤のパンを買うために一輪車いっぱいにマルク紙幣を積んでいかなければならなかった、ビアホールでビールを注文し、飲み終わったときにはすでに価格が上がっていた、などという話の数々です。このハイパーインフレは、通貨の切り上げや投機的な金融取引を禁止することで、翌年、奇跡的に収束します。このときに作られた新しい通貨は「レンテンマルク」だったので、このインフレ収束は「レンテンマルクの奇跡」と呼ばれるようになりました。

その後、ドイツ経済は一時的に回復します。そもそもドイツには工業力の地力があったのです。が、せっかく経済が回復しかけたところに、アメリカの高関税政策で大きな打撃を受けます。ドイツ経済は、「アメリカからの投資」と「アメリカへの輸出」で保っていましたので、アメリカの高関税、貿易縮小政策により、多大な影響を蒙ったのです。

世界大恐慌よりも半年早くドイツ経済は破綻状態となっています。1929年の世界大恐慌はアメリカ発とされていますが、実はドイツ発だったのではないかと筆者は考えます。世界大恐慌後のアメリカの高関税政策は、さらにドイツ経済を痛めつけます。1931年7月には、ドイツ第2位のダナート銀行が破たんし、ドレスデン銀行など経営危機に陥る銀行が続出、多くの企業が倒産し、650万人もの失業者が生まれたのです。

その中で急成長してきたのが、ヒトラー率いるドイツ国家社会主義労働者党「ナチス」なのです。また日本も、各国のブロック経済化により大きな打撃を受けました。それを解消するために満州や中国に兵をすすめ、ここで日本のブロック経済圏をつくろうとしました。中国市場に野心を持っていた英米は、これに大きく反発します。アメリカの高関税政策は、第二次世界大戦を引き起こした要因の一つだといえるのです。

(本記事はメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2026年3月1日号の一部抜粋です。そのほか「アメリカのイラン攻撃の危険性」 「高齢おひとりさまのための金を掛けずに孤独を防ぐ方法」を含む全文はご登録の上ご覧ください。初月無料です)

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