イランが“米軍の墓場”となるか?停戦協議の不発が招く“最悪の事態”を理解できぬトランプとネタニヤフの愚

 

「短期決戦で台湾制圧は可能」という楽観論を抑制する習近平

アメリカとイスラエルについては、2月28日に、まだ調停努力が進められる中で強行したイランへの全面的な攻撃の実施は、大きなショックを与えることになりましたが、当初狙ったようなイランの体制転換には繋がらず、次々と政治指導者を暗殺してみても、一向にイランの報復能力と意欲が削がれることなく、アラブ諸国に散らばるアメリカ軍部隊も、イスラエルも、イランからの報復の波状攻撃に晒され、大きな被害を受けています。

またイランがホルムズ海峡の封鎖という手段に打って出たことと、親米とされる周辺のアラブ諸国のエネルギー施設を破壊したことで(これらの破壊攻撃については、イスラエルによる仕業とされるものも多数あり、すべてをイランの責任にすることはできませんが)、世界経済に対する大きな打撃と懸念を与えたことで、その非難の矛先が巡り巡ってアメリカに向けられています。

アメリカはこの作戦において、イランの施設を破壊したとはいえ、イランに“エネルギー”という世界経済の潤滑油を人質として握られる“非対称戦術”を取られたことで、苦戦する羽目になっています。

4月8日にパキスタンの仲介で米とイランが2週間の戦闘停止に合意したと報じられ、かつイランが「2週間の停戦が守られる限りは、ホルムズ海峡の封鎖を解く」と発言したことを受け、世界の株価は上昇し、歓迎ムードが漂っていますが、4月10日にパキスタンの首都・イスラマバードで予定されている本格的な戦闘終結・停戦に向けた協議が果たして成功裏に終わるかは、非常に不透明な状況です。

ただ、アメリカとイランの主張にはまだ隔たりが多く、“レバノンに対するイスラエルの攻撃の停止”を合意に含むか否かについても、米・イスラエルとイランとの間の解釈・認識がズレていることからも分かるように、合意と恒久的な停戦の実現は、極めて困難だろうと、個人的には考えています。

米イラン間の停戦・戦闘停止合意については、また後程、触れたいと思います。

ではもう一つの大国・中国はどうでしょうか?

中国については、就任後、とりたてて目立った成果を挙げることが出来ていない習近平国家主席が、台湾(中華民国)を中国人民共和国に併合して大中華帝国を作り上げることを宿願に挙げているため、定期的に“いつ台湾への武力侵攻に踏み切るか”という問いが上がってきて、今年や来年あたりがXデーと言われているものの、米ロの失敗例を冷静に分析し、人民解放軍内に根強い「短期決戦で台湾を制圧できる」という楽観論を抑制して、今はウクライナ戦争とイラン情勢の行方を見守っているのが実情かと考えます。

ただ怖いのが、習近平国家主席が抱く個人的な宿願である“中華民族の偉大なる復興”を掲げて台湾侵攻を命じる場合ですが、これは失敗した暁には習近平国家主席の態勢は終焉し、恐らく人民解放軍が暴発して体制崩壊に向かうか、またはミサイル攻撃で台湾を壊滅させるという暴挙に出て1,000万人以上の虐殺を行って国際社会での威厳を失って孤立無援の状態になるか、というワーストシナリオしかありません。

ゆえに、中国は慎重にならざるを得ず、武力侵攻を控えて、“戦わずして勝つ”ハイブリッド戦争を行おうとするものと推測します。

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