「皆が中国を捨ててアメリカになびく」という大きな誤算
それはアメリカ政府内の強硬派の誤算ではないかと思います。
「年初の対ベネズエラ攻撃が思いのほか、成功裏に執り行われ、アメリカ軍側の犠牲をゼロに抑えられたことに照らし合わせて、イランに対する戦争によって、ベネズエラのケースで成功したように、台頭する中国を抑え込み、世界の力関係を再び米国有利に変える」ことを目論み、「石油の流れを握るアメリカの優位性が中国の脆弱性を浮き彫りにし、中国に傾いた国々を取り戻せる」と考え、さらには「アメリカの軍事的な優位性・優越の協調と共に、中国が(ベネズエラの時のように)友好国を救えないか、または救おうとしない姿勢が際立ち、皆が中国を捨ててアメリカになびく」という大きな誤算です。
実際のイラン情勢は、攻撃からすでに1か月以上が経過し、“完全に破壊した”はずのイランの軍事力がイスラエルおよび地域内に展開する米軍を脅かし、実際に大きな被害を与えたのみならず、ホルムズ海峡を掌握することで世界経済の流れを止めて、非軍事的な武器も活用して、イランに主導権を握らせてしまったと分析できるかと思います。
軍事力ではアメリカとイスラエルには及ばないものの、世界経済の喉を掴み、じりじりと締め上げていく術をもつことで、イランが情勢の主導権を握っています。
停戦については、あくまでも国内の疲弊への対応のための時間稼ぎであり、イランとしては今、生存のための戦争を止めるインセンティブはないため、停戦のための条件があからさまにアメリカとイスラエルに破られる場合には、レベルアップした攻撃を行うものと考えられます。
ロシアの苦悩を眺めつつ、今回のアメリカによるイランへの攻撃をみて「この戦争は明らかにアメリカの重大な過ちであり、アメリカの衰退を確証させるもの」と捉える中国は、自国の利益のためにも、イランを持ちこたえさせることに専念しているようです。
今回の停戦合意の背後に中国政府の影・影響力があったというトランプ大統領の発言がありましたが、それは5月の米中首脳会談に向けたジャブのみならず、中国をイランから引き剥がしたいとの意図が見えていますが、中国政府は停戦合意への関与については明言せず、あくまでも【敵が過ちを犯している時は、決して邪魔をするな。】というナポレオン・ボナパルトの言葉をモットーとして用い、今回のアメリカ主導のショーとは距離を置いています(中国はイラン問題解決のための仲介には関心があるようですが、他人のショーにゲスト出演する気はないようです)。
トランプ大統領によるイランへの固執ゆえに、世界における米軍のプレゼンスが偏り、そして同盟国を守るための部隊や装備も中東地域に集中投入される中、アメリカによる軍事的な抑止力が各地で低下しています。
アジアにおいては、それこそが中国にとっての利益であり、もしかしたらそれが習近平国家主席と人民解放軍に“よからぬこと”を考えさえることに繋がってしまうかもしれませんが、中国が、アメリカとロシアがそれぞれに戦時体制に入り、各地で終わりなき戦争に足止めを食らう中、台湾併合を強行するようなことになれば、大きな戦争がドミノ現象のように繋がり、それが核保有国をフルに巻き込んだ第三次世界大戦を勃発させることになってしまうのではないかと恐れています。
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