イランが“米軍の墓場”となるか?停戦協議の不発が招く“最悪の事態”を理解できぬトランプとネタニヤフの愚

 

大国といえども「思うように戦いを進められない」という現実

三大国に共通する“現実”は、20世紀型の“電撃侵攻”と“短期戦”という方程式が通用せず、代わりに精密誘導ミサイルや安価の無人ドローンが戦場に投入され、ハードコアな戦争に加えて、サイバー攻撃やSNS、およびグローバルネットメディアによる世論形成、そしてそれを支える衛星および情報コミュニケーション技術を用いたリアルタイムでの情報共有と提供というソフトな戦争も加わったハイブリッド型の戦争が21世紀の特徴となる今、すべての戦争が長期的な消耗戦となり、かつ厭戦機運から起因する支持率低下という政治的なコストが増大するという図式になり、大国といえども思うように戦いを進め、欲望を現実のものにするのが困難になっていることでしょう。

どのような形であったとしても、仮に三大国が同時進行で戦争を遂行するような状態になれば、全世界を巻き込む戦争ドミノが生まれかねません。

中国に対しては在アジア米軍のみならず、日韓も参戦を余儀なくされるでしょうし、ロシアについては、もしNATOやEU諸国が積極的にウクライナ支援にコミットするか、または地上部隊の派遣を行った場合には、欧州全域を舞台にした大規模地上戦をはじめ、想像できないような地獄絵図が広がることになるかもしれません。

今のところ、その悲劇は起こっていませんが、そのトリガーとなりかねないのが、現在のイラン情勢を巡る刮目です。

4月8日にパキスタン政府の仲介の下、アメリカ、イスラエルとイランの間で2週間の戦闘停止が合意され、それを受けてイラン政府はホルムズ海峡の封鎖を解くことに合意しました。

4月10日に(アメリカ政府によると11日に)イスラマバードで本格的な協議を行うことで合意されたとのことですが、4月9日現在、すでに停戦・戦闘停止は有名無実化したようです。

その原因は、“戦闘合意”の中に【レバノンなどを含む戦闘停止】が含まれるか否かについての当事者間での認識の違いなのですが、「レバノンに関する合意をイランとした覚えはない」と主張するイスラエルは(米国の同意を受けて)、4月9日にレバノンへの大規模攻撃を加えたことで、イラン政府は「これは明らかな停戦合意違反だ」と反発し、ホルムズ海峡の封鎖をイラン政府が宣言する事態に発展しています。

停戦・戦闘停止合意については、多方面で解説がされていますので、敢えて深堀しませんが、私が大きく懸念しているのは、合意のベースとなった“イラン側が提示した10条件・項目”を巡る解釈のズレです。

このズレですが、2つのアングルがあります。1つは双方(アメリカとイスラエルvs.イラン)が互いに勝利宣言をしていますが、全く真逆の主張をしていることです。

例えば“ウラン濃縮継続の可否や濃縮ウランの引き渡し”については、イラン側は継続が認められたとしていますが、アメリカ側の発表では「濃縮ウランの引き渡しに合意」と主張されています。

他には“ホルムズ海峡の統治”については、イランは“イランによるホルムズ海峡の支配が認められた”としていますが、アメリカ側はホルムズ海峡の扱いについては詳細を語らず、ただ「ホルムズ海峡が解放される」とだけ述べています。

さらにはイランが“勝利”の一因として挙げているのが【地域内のすべての基地から米軍を撤収すること】が合意されたという主張ですが、これについてアメリカ政府は言及をしていません。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • イランが“米軍の墓場”となるか?停戦協議の不発が招く“最悪の事態”を理解できぬトランプとネタニヤフの愚
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け