2千年にもわたるイスラエルの「レコンギスタの歴史」
では他の国々・地域はどうでしょうか?
レコンギスタといえば、まず思い浮かぶのが“イスラエル”ではないかと思います。出エジプトに端を発する“国を持たない”流浪の民の2,000年にわたる歴史は、まさにレコンギスタの歴史と言え、1948年に欧米の助けを受けて神に与えられし土地における神の国“イスラエル”の建国に至ります。
イスラエルにとってこの国はまさに生存のアイデンティティともいえ、その存続と生存を脅かすものに対して、非常に激しい攻撃性(防衛反応ともいう)を示すのが特徴です。
長い年月をかけて失われたユダヤ人の国家を回復したのがイスラエルであり、イスラエルの極右勢力や正統派ユダヤ教徒曰く、「今もまだイスラエルは失地回復の真っ只中におり、まだその仕事を完遂できていない」という考えが色濃く影響しているようです。
ゆえに、ハマス掃討を理由にしたガザ地区への攻撃と占拠、ユダヤ人入植地の拡大を通じて進めるヨルダン川西岸地区の実効支配も、そして聖地エルサレムのユダヤ化(イスラム教やキリスト教の聖地でもあるが)を進める理由に失地回復が用いられ、生存の脅威の除去という目的と共に、失地回復を理由としたレバノンやシリアへの侵攻も正当化されているように感じます。
対イラン攻撃が国民に支持され、ハマス掃討作戦やヒズボラ掃討作戦などが、イスラエル国民の間で一定の支持を集める背景には、ユダヤ特有の思考と認識が存在するのではないかと、深く話を聞くごとに意識するようになってきています。正しいかどうかは、分かりませんが。
ではイランはどうでしょうか?あえてレコンギスタ的な見方をするならば、ペルシャ帝国への慕情(世界強国への復帰を切望する)でしょうか。
1978年のイスラム革命によって、パーレビ王朝は打倒され、その後、宗教指導者による統治が行われていますが、今回の米との和平協議に際してペゼシュキアン大統領が触れたように“ペルシャ帝国・文化への親しみと誇り”は今も国民の間に根強く意識されているようです。
現在の宗教指導体制に賛成か反対かは別として、イランの皆さんに広く支持され、共有されているのが、ペルシャ人としての誇りだと言われています。
アメリカおよび欧州への対峙がもしペルシャへの回帰というレコンギスタなのだとすれば、反欧米の言動も理解できます。
ただ、調停・仲介の際に触れる現在のイランは、アラブ諸国との“イスラム”をベースとしたつながりの強化という方針も取っており、周辺国に攻撃は加え非難は浴びているものの、イスラムの連携が、宗派を超えて図られているように感じます。
レコンギスタ的にいうと、かつてのペルシャ帝国とアラブの人たちの連携の再興を目指しているのでしょうか?
トルコについては、オスマン・トルコ帝国の精神と誇りは、ペルシャ帝国のものと同じかと考えられ、首相時代のエルドアン大統領を指して“アラブの父“と呼んでいたように、アラブの父としての立場への復権という、一種のレコンギスタが図られているのではないかと考えています。
また、経済的なスランプを機に勢いが衰えたトルコも、半ば強引すぎると非難されるエルドアン大統領の戦略を通じて国際社会におけるパワーハウスへの回帰という、国際舞台における失地回復を図っているのではないかと考えます。
ロシアのプーチン大統領が欧米に裏切られて路線変更を行ったように、エルドアン大統領のトルコもまたEU加盟を夢見つつも欧州各国に冷遇されたいきさつをベースに欧州との対峙に打って出て、様々な政策フロントで欧州に圧力をかけて、欲しいものを手に入れるという究極の交渉術を発揮しています。
独自のスタンスを確立しつつ、アジアと欧州とアラブの核に位置するという地政学的な利点もフルに活用し、今ではウクライナ問題、イラン情勢、アラブとの対話、中央アジアのトルコ系連合の強化などの中心に位置し、確実に失地回復を進めているように見えます。
今後、緊張が高まる国際情勢下で、戦争の連鎖・ドミノ倒しを防ぎ、第3次世界大戦を未然に防ぐには、トルコの役割は決して無視できません。
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