安保マフィアにとって何の心配もない高市首相の一挙手一投足
ところが、高市政権の発足にあたっては、このような米国の「ジャパン・ハンドラー(対日調教師)」とも呼ばれる安保マフィアからの指南書は届かなかったようだ。
それもそのはずで、高市は放っておいても、昨年11月7日の最初の衆院予算委答弁で、台湾海峡で中国と台湾の軍事紛争が起きたら直に自衛隊が出動・介入出来るかのような虚言を吐いて日中関係をフリーズさせてしまったし、翻ってトランプ大統領に対しては媚態の限りを尽くして擦り寄る姿勢を見せているので、彼らにとっては何の心配もない。
それどころか、師匠と仰ぐ安倍でさえ迷ってバランスを取ろうと散々もがいたことなど省みようともせず、思い込んだら一直線に突き進んでしまうのが高市だから、逆に、決して中国を敵視せずあくまで取引相手と捉えているトランプとの間にギャップが生じることもあり得よう。
対中強硬派として知られるルビオ国務長官はこのところ慎重な姿勢を取り、台湾問題に関して「現状維持を重視し、双方からのいかなる現状変更にも反対し、台湾独立を支持しない」という従来からの定義が不変であることを強調している。
それは、トランプがその場限りの駆け引きで「米国は台湾の独立に反対する」と一歩踏み込んだ“失言”をしかねないことへの牽制であって(日経5月10日付)、高市や小野寺が期待するような台湾有事の際には米軍が介入するつもりであることの表明に突き進む可能性は限りなくゼロである。
1996年の台湾総統選挙で国民党の李登輝が勝利する可能性が高まったのに対し、中国はそれを嫌って台湾の高雄近海にミサイルを撃ち込むという愚挙に出た。それに対し時のクリントン米大統領は2つの空母機動艦隊を台湾周辺海域に急派するという、それこそ「毅然とした対応」を見せたが、ロクな海軍も持っていなかった中国は為す術もなく見守るだけだった。
それは単に屈辱というだけでなく、いざという場合には武力を用いてでも台湾の独立を阻止するという1949年以来の“国是”に何の実体的裏付けもないことの露呈だった。
そこから、米空母艦隊に勝つのは難しいとしても、せめてその接近に抗うだけの近代的な海軍を建設することを目標に、猛然たる軍拡が始まり、30年後の今日では3つの空母機動群と地上発射の短距離ミサイル900発、「空母キラー」と呼ばれる東風21Dを含む中距離ミサイル1,800発(諸説あるが米ペンタゴン『中国軍事力報告書』の24年の数値)のほか巡航ミサイル、潜水艦発射ミサイル、ICBMなどを備えていて、米空母が出動すればほぼ間違いなく全面的な戦闘となりそれが核戦争にまでエスカレートすることを覚悟しなければならない。
従って、米国が台湾有事に際して「毅然として対応」を取る可能性は30年前に比べて格段に小さいと見なければならないだろう。これはトランプが他の誰かに代わっても同じである。
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