しかし実態は違う
実際は、奈良弁護士会がいじめの第三者委員会の推薦依頼を業務に見合わない報酬であるなどとして問題になったように、特に自治体によりけりで、ほぼ総じて激安報酬である上に責任と膨大な業務量を押し付ける第三者委員の選任問題は自治体側の報酬基準の問題であった。条例改正をして偉そうにしている地方自治体もあるが、それでも業界の報酬基準から考えると、80%オフ〜40%オフ程度である。改正をしていない自治体はそれ以下であるから、仕事ではないと言われても仕方がない状態なのだ。
他にも情報開示請求で学校が教育委員会に報告した内容などを見ている被害者側はほぼ全員が、被害者が悪者にされていたり、家庭の問題にされていることを知っているであろうが、偏向、ねつ造、偽造した報告書も普通に出てくるのが実態であり、調査審議が主体の第三者委員会は、通常の観察力がある委員が困惑するシーンも多くなるだろう。結果、調査は長期化しやすくなり、真実を解明するのに時間が掛かればまだ良い方で、解明するに足りないとなりやすい。
つまり、調査に偏重したいじめ対策が重いというのは、制度の問題と学校側のガバナンスの問題であり、内部問題が圧倒的に大きいのだが、自らの無能の責を取りたくないからこそ、問題を他責としたかったわけだ。
その結果、まさかとは思ったが、いわゆる「無能のためのオペレーション」が行われ、調査の簡素化、第三者性の簡素化、形骸化した独立性を認めるガイドラインが出来上がったわけだ。
誤った議論と評価により改悪の事例
具体的には、学校のいじめ対応が調査対象であっても、改悪ガイドラインでは学校主体で調査をしてもよいし、教育委員会の担当課の元課長が学校長であっても、教育委員会の職員で主に形成される教育委員会方式で第三者委員会を形成してもよく、外部の専門家が1名参加でいれば、外部委員会なんだと言い張れてしまう。
しかし、どの条例や自治体の規則も、こうした委員会の主な権限は委員長が持っていることになり、外部の委員が平の委員であれば、せいぜいできて懸念表明程度でそれが調査結果に影響することは無いのだ。
さらに第三者委員会の委員の中立公正については、異様な歪みが示された。なんと、職能団体が推薦状を出せば、それで良いとされているのだ。 一般常識がある賢明な読者の皆様は、なんじゃそりゃ、と思うだろうが、わからない方のために解説する。
多く問題が起きるのは常設委員会で委員となり、個別のいじめ重大事態問題の調査審議に当たる委員についてだが、この委員は常設するにあたって職能団体から推薦状が発行されている。
つまり、個別に発生する問題についてはその限りではないはずなのだ。
なぜなら、常設委員会の本筋は、予防や啓発、問題発生時の学校や教育委員会の適切な対応のアドバイスやそれを行うための根拠となる規則や条例案などの検討などである。
だから、職能団体としては、そうした専門知識を有していたり、経験があるから推薦をするのである。
しかし、委員は就任してから発生する個別問題にあたらせられるわけだ。
つまり、本来の職能団体の推薦状の目的は全く異なるものであるのだが、常設委員会の委員を個別問題にあたらせる教育委員会などは、改悪ガイドラインを盾に、推薦状があるのだから、中立公正であることは文科省がお墨付きを与えていると言い張るのだ。
これが成立するのであれば、その委員が所属している職能団体は、未来を予測して被害者加害者など調査対象となる人物やその家族や親せきと利害関係がないことを知っているということになる、ノストラダムスも鼻血が出るほどびっくりする予知能力を持っていることになってしまうわけだ。
そんな能力があるなら、全て職能団体に任せ、未来予知により未然防止をすればよいだけだが、当然にそんな能力はない。
つまり、こうした推薦状は直ちに「中立公正」を示すものではないにも関わらず、文科省の改悪ガイドラインは、それでも良いと堂々と表記したがゆえ、これを悪用し、文科省が恰もお墨付きを与えているからいいんだもん!と開き直る地方自治体、教育委員会がいくつもあるわけだ。
まだまだあるが、上に示す具体例はほんの一部であり、改悪ガイドラインにより、第三者委員会とは言えない実質隠ぺい委員会やとりあえずマーやりました委員(トリマ委員会)が激増しているのが今の実態なのであるが、調査偏重だという風潮は、抵抗がないから、時間と共に常識化されることになったわけだ。
一方で、データ上、重大事態いじめの数は増え続けている。
年度別 重大事態 認定件数
2020年度 (R2) 514件 コロナ禍の一斉休校等があったが、前年比で減少せず。
2021年度 (R3) 705件 前年比で約200件の急増。SNS関連のトラブルが増加。
2022年度 (R4) 923件 認定が遅れていた事案が表面化し、過去最多を更新。
2023年度 (R5) 1,306件 初めて1,000件を突破。国が「早期認定」を強く指導した結果。
2024年度 (R6) 1,405件 全国的な認知件数の増加傾向が続く。
2025年度 (R7) (現在集計中・高止まり予測) 全国で第三者委員会の設置が追いつかない状況が常態化。
(文科省認知数)
重大事態いじめとは、1号生命身体財産などに著しい被害の疑いがある、2号いじめによる不登校の疑いがあると押さえておけばよいだろう。通常のいじめとは異なる被害状況が酷い状態を示すものだが、これが倍増しているということを示している。
しかし、実際の現場にいると、条件として明らかに重大事態要件を満たしている状態でも、丁寧に対応したんだもんという謎の理由で、重大事態として認めない学校があったり、第三者委員会の設置をすると長期化する、学校が動かなくなる、酷い被害で自死念慮が強くなっている被害生徒に根掘り葉掘り聞くことになるとネガティブキャンペーンをして被害保護者を脅し、申し立てを潰して認定しない教育委員会が平常運転であるという現実に直面する。
つまり、隠ぺいと消極認知、誤認を排除すれば、この数はそもそもでもっと多いはずという氷山の一角に過ぎないという現実があるのだ。 その一方、数が倍増している=対応できない→簡略化をもっと進めたいという論調は、いわゆる学校側有識者の中では当然の結論として扱われているのだ。
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