日本にとっては大きな岐路に。トランプと習近平“会談成功”の先に見えてきた「AI米中同盟」という新時代

 

米中が「合意しなくてはならなかった」ウラ事情

この点に関しては、日本も深い関係があります。日本国債もこの間、ほぼ今世紀としては「未体験ゾーン」となるような下げを見せています。日米連係が機能しているのか、今のところは円は158円で踏みとどまっていますが、円と日本国債については依然として危機が継続していると見るべきでしょう。

さて、米中会談の市場への影響の話に戻るとしましょう。この点に関して言えば、会談の好感触を受けての14日(木)の上げと、債券下落を嫌った15日(金)の下げというのは、セットで考えるべきと思います。14日に上げたけれども、15日には帳消しになったという解釈も出来ますが、それは違うように思います。裏返してみると、15日に下げたというマイナスのエネルギーは最初からあり、だからこそ米中は合意しなくてはならなかったのです。そして合意が見えた14日にはその分は上げたというロジックです。

米市場のセンチメントは非常に複雑です。とにかく、景気後退への懸念は明確にあります。とりわけインフレ下の雇用低迷という「スタグフレーション」懸念はかなり濃厚です。財政も怖いですし、「日本発の債務爆弾の連鎖」などという予測をする輩もゾロゾロいます。そんなNY市場では、少しでもマイナスの材料があれば株は売られてしまうのです。そう考えると、15日に下げるようなエネルギーがあるということは、そのこと自体が米中合意を強く後押ししたと考えられます。

さて、時間を少し先へ進めましょう。米中会談について、一旦多くの投資家が受け止める時間を経た後の週明けのNY市場は落ち着いた動きで終始しています。実は、この動きは米中通商合意による実体経済の改善というテーマとは少し違っています。そうではなくて、AIに関する動きを好感したものだとされています。

とりあえず、注目されているのはAIに使用するGPUメーカーであるNVIDIAです。同社のファンCEOは、今回のトランプ訪中に同行していました。当面の焦点は、最先端の半導体の一つであるH(ホッパー)200というモデルについてです。既に次世代のブラックウェルが実用化されつつありますが、依然としてホッパーの特に200というグレードはAIの演算における主力半導体です。

ちなみに、どうして演算にGPU(画像処理プロセッサ)が使われるのかというと、CPUに比べて並列計算能力が高い設計だからです。GPUはそもそも、ゲームなどの動画、画像処理のために設計されており、それが一時期は「暗号資産のマイニング」に使わたりもしていましたが、今はAIの主力というわけです。さて、このホッパー200ですが、当初アメリカは安全保障の懸念から中国への禁輸をしていました。

そうなのですが、別に安全保障上の問題はないという理解に変わって、輸出規制を緩和しようとしたら、今度は中国側から独自開発するので購入はしないと言ってきたのでした。この点に関しては、実はNVIDIAという企業は設計は自分たちでするのですが、大量生産は台湾のTSMCに委嘱しています。これに対して、中国側はナノレベルの製造技術で対抗するのが国策。そこで自国生産にこだわったようです。

これに対して、ファン氏は改めて中国に購入を促すセールスの旅という位置づけでした。結局、会談期間中はH200の扱いについては明確な発表はなかったのですが、市場は前向きな感触を材料にしています。今週半ばに、NVIDIAの決算発表があるのですが、その直前のタイミングで買いのトレンドが出てきているのには、H200の商談がまとまる可能性を感じてのことです。

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