米国と比較すればもう少し単純な高市政権の「合板」
このアメリカの現状という「合板」と比較すれば、日本の高市政権の「合板」というのは、使われている接着剤も含めて、もう少し単純だとも言えます。詳細にわたる検討は、改めて行いたいと思いますが、少なくとも為替と財政規律についていえば、
「国内の集票のカギは地方の名望家、彼らは生産を中国に委託して欧米市場で食っているか、観光業なので円安志向」
「ゼネコンとその裾野は円安だと資材が入らないが、バラマキの恩恵で味方に」
「円安インフレは税収増なので、財務省も歓迎。だが、将来的には財政破綻はイヤなので、恒久減税には慎重」
「空洞化を脱するとか、DXもAIも本格化となると、国内の年齢ヒエラルキーや教育制度に手を付ける必要。これは保守派は嫌うので、国内改革は敬遠。原発推進も同様。したがってどうしても空洞化に流れる」
「ガス抜きは観光客への憎悪など排外感情を適度に燃焼させて処理」
という「合板」ができているわけです。ただ、この貼り合わせは、アメリカほどのダイナミックではなく、ミクロの合理性を持っているので接着してしまうのです。また、アメリカとは違って悪役(ヒール)が、
「持てる世代が、敗戦体験を伝承して平和主義とか反国家などという、究極の倫理マウンティングをしてくる」
というのを指摘すれば、簡単にアンチのエネルギーは作り出せてしまいます。それはともかく、アメリカの接着剤が「開拓精神から来る名誉概念のゆがみ」であるならば、日本の場合は、
「納税者カスハラが正義になってしまうカルチャー」「世代間の不公平」「枢軸日本を批判されると被害感を感じてしまう認知の歪み」
など、一つ一つの接着剤は薄っぺらですから、引き剥がしということでは、アメリカよりも容易ではないかと思われます。ただし、一つだけ日本の場合は要注意な部分があります。それは、
「終身雇用制度の適用を受けている票は、安全圏からの投票行動になるので、ギャンブルも遊戯も可能」
ということで、これはアメリカの団塊世代の年金生活者が「投票での逸脱行動」に走ったのと同じで、極めて不安定かつ衝動的に動くということです。参政党現象も、高市現象もこうした力学が作用している中では、個別の現象としては極端に走りがちということになります。
それはともかく、もう一度申し上げますが日本の場合には、接着剤の強度も、異なった「ベニヤ」を貼り合わせて強固な合板になる必然も、期間限定で弱いものを感じます。このあたりを徹底して検証する、特に高市氏の公明から維新へのスイッチというあたりにも、政治学(ポリティカル・サイエンス)としての分析が必要と思います。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2026年7月21日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週の論点「退職代行の次は休職代行、何が問題なのか」、人気連載「フラッシュバック81」もすぐに読めます。
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