小泉進次郎「核を巡る発言」は何を意味するのか?米軍兵器が枯渇しつつある「中東」と核議論が湧き上がる「極東」とを結ぶ“点と線”

 

■ロシアに残されている「冬」と「動員力」という伝統的強み

ちなみに笹川平和財団の畔蒜泰助氏は、今の状況を「トランプに対するアピール合戦」と表現しています。

今年1~3月の米国仲介による3回の停戦協議は結局まとまることはなく、ウクライナ側交渉担当のブダノフ大統領府長官は最近、今の局面を「最終的にディエスカレーションするためのエスカレーションのフェーズ」と説明しているそうですが、これは“合意にたどり着くため、あえて強気に出て交渉する”ということではないかと私は考えています。

もともとトランプ氏は2025年8月に米アラスカ州アンカレッジで行われた米露首脳会談において、「ドンバス2州の残り地域からのウクライナ軍撤退と引き換えに停戦」というかなりロシア寄りの枠組みに合意していました。

しかし、ウクライナとヨーロッパはこれを拒否し、その後もジャレッド・クシュナー氏らが主導する形で似た案が再浮上する一方、国務長官ルビオ氏はウクライナ寄りの対案を出すなど、政権内部の足並みも揃っておらず、米国政府内でも明確な落としどころのイメージができていない・共有できていないことがよく分かります。

畔蒜氏は「ウクライナは今ロシアを混乱させトランプへのアピールでも成功しているように見えるが、それだけで勝てるわけではない。ロシアにはまだ余力が残り、プーチン氏は9月の下院選挙後に本格的な動員に踏み切るのではとの観測もある。ウクライナがすでに国力の限り兵員を動かしているのに対し、ロシアはまだ総動員に踏み切っていない――ここに『冬』と『動員余力』というロシア側の伝統的な強みが残っている」という見解を示しています。

正直、二つの分析を並べて読むと、戦況の複雑さを改めて痛感すると同時に、状況判断の難しさを改めて思い知らされています。

「プーチンは追い詰められている」のと「ロシアはまだ負けていない」のは、実は両立し得る話なのでしょうが、はっきりと分かることは、この戦争がまだまだ長期化し、泥沼化して世界全体に悪影響を及ぼし続けるということです。

私は国際交渉の現場で、何度も「戦争の出口」を探る対話に立ち会ってきました。その経験から言えることがあります。

交渉では、「相手が何を持っているか」よりも、「相手が何を失うことを最も恐れているか」を見極めることが、交渉の成否を左右します。

この視点で現在のウクライナ情勢を見ると、双方が競っているのは、必ずしも領土や兵器の数だけではありません。国家としての意思をどこまで維持できるのか、そして国際社会からの支持をどこまでつなぎ止めることができるのかという、「持久力」と「心理」の戦いが続いているように見えます。

だからこそ、私は戦況だけではなく、その背後で静かに変化しつつある交渉環境にも注目しています。

私は交渉人として、この状況を見るたびに思い出すことがあります。

調停の現場では、当事者双方が「あと少しで勝てる」と考えている間は、和平は成立しません。逆に、双方が「これ以上続けても決定的な勝利はない」と認識した瞬間、初めて現実的な妥協が視野に入ります。

私は今回の戦況を見ながら、現在のウクライナ戦争は、まさにその転換点が徐々に近づいている可能性を感じています。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • 小泉進次郎「核を巡る発言」は何を意味するのか?米軍兵器が枯渇しつつある「中東」と核議論が湧き上がる「極東」とを結ぶ“点と線”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け