起きてしまった「従来の常識」ではあり得ないような事故
現在の「震度」計測にあたっては、主として加速度と揺れの周期をベースとした計算結果によって、震度表に照らし合わせて震度を決定しています。
一方で、今回の地震においては、
- イオンモールのガス管が、想定を超えた揺れのために破損してガス漏れを起こした
- 日本製紙八代工場の煙突が折損し、重大な人的被害が発生
- 八代駅構内に停車中のJR貨物EF510型電気機関車が転倒
- 新築同様の八代市庁舎で、基礎部分における震度7対応の免震構造が破損
といった従来の常識ではあり得ないような事故が起きています。これに関しては、震度7といっても、その中身、つまり加速度と周期だけでなく、揺れ幅や継続時間、あるいは揺れの角度などが影響していると思われます。
それにしても、ここで挙げた4つの事象というのは、それぞれに非常にショッキングな事件です。例えば日本製紙の工場で煙突が倒壊したというのは、煙突という倒れやすい建造物は、倒れやすいために明治大正の昔から、何らかの基準を設け、それを減災意識とともに厳格化してきた歴史があるわけです。
特にこうした大規模な工場の場合は最も厳格な基準が適用されている、というよりも60メートル以上の煙突の場合は個別の審査も通さなくてはなりません。それが倒れたというのは、基準そのものを見直す必要を感じさせます。
イオンのガス管については、詳細な調査結果を待つにしても、地震におけるガス漏れの恐ろしさということでは、関東大震災以来100年以上にわたって、日本は取り組んできたテーマです。現時点では、屋外に設置されたLPGタンクからフードコートへの配管が、途中で折損した可能性が指摘されています。
これも「想定を超える揺れ」が懸念されます。また、嘉島町のイオンの立地を考えると、布田川断層と日奈久断層に挟まれた「北甘木断層」が局所的に動いた可能性もあります。嘉島町の震度については、震度計のデータが公表されておらず、推定値が出ているだけというのも、更に調査が必要な点であると思います。
八代駅構内における、停車中のJR貨物EF510型電気機関車が転倒した事故も驚きました。この型式の電気機関車というのは、モーターに加えて変圧器などの主要機器を加えると車重は100トンになります。それが停車中に倒れたというのはショッキングな事故です。この箇所の揺れについても、徹底した検証が必要でしょう。
八代市役所の新庁舎(2022年落成)は、2016年熊本地震での被災を受けて免震構造で建設されたものです。地下の基礎部分にゴムダンパを噛ましているのですが、そのダンパが横方向にちぎれてしまっています。これも、震度7に耐える設計ということですが、7は7でも猛烈な力がかかったことが想定されます。
ちなみに、耐震性能というのは例えば建築基準法の場合は、かなり厳格な計算式によって定義されています。「震度7の耐震性能」などという大ざっぱな定義はされていません。その計算式やパラメーターは非常に複雑ですので、今回は省略しますが、今回の場合は基準として「免震・耐震」性能を定義して、これを満たした建築等が壊れてしまったのです。
つまり基準で定義されている中身、つまり加速度、周期、揺れ幅、継続時間、角度などによっては揺れが性能を上回ってしまうということは起き得るわけです。そして、残念ながら今回はこれが起きてしまったのです。
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