「震度7」に耐える免震・耐震技術でも破損。令和8年熊本地震の「想定を超えた揺れ」が明らかにした“現行基準の弱点”

 

今こそ変えるべき「震度7が最大」という現状の基準

ところで、厳密な計算式に基づく耐震基準と震度というのは、全く別の尺度ではありますが、安全意識を喚起したり、都市計画や保険係数の算定については、震度という基準は今でも使われています。この震度について言えば、震度6には震度6強というのがありますが、震度7にはありません。それどころか、例えば加速度や周期から計算して震度7をはるかに超える揺れであっても、どこまでいっても7なのです。

そう考えると、今回の地震の場合は7を超える激しい揺れに襲われたケースがあるように思います。それでも震度的には7ということになりますが、実際は震度7相当の免震・耐震対策では足りずに破損などが起きたというケースもあると思います。

従来の考え方では、震度7では建物が全壊するのだから、それ以上はどこまで行っても震度7ということでした。ですが、震度7を想定して免震・耐震の技術が進んだ中では、想定した震度7を超える揺れがあったのであれば、性能が追いつきません。今のままですと、極論になりますが震度7に耐える免震・耐震技術というのを完璧に実現するのなら、無限大の揺れにも耐えなくてはならないということになってしまいます。

申し上げてきたように建築基準における耐震基準というのは、厳格な計算式に基づいているわけですが、仮にその基準の大元の原点が「震度」にあるということでしたら、「7が最大」という現状は変える必要を感じます。熊本のように、10年間に震度7が3回というような場合も起きつつある中では、震度の測り方について、7以上はどこまでも7という現在の仕組みが良いのか、見直しが必要に思います。

もう一つ、震度の測り方と公表の仕方については、今は原則として市町村ごとの震度計をベースに発表がされています。しかし、強い揺れというのは市町村の境界とは全く関係がありません。例えばですが、今回の八代市役所庁舎の被災が良い例です。

八代市の震度は6強なのに、震度7に耐えられる免震構造が破壊されて、築3年の庁舎が使い物にならなくなったというのですが、震度計の設置箇所は市役所とは全く別の場所にあります。一つは泉町という山の中ですし、もう一つは断層に沿ってはいるものの、球磨川の対岸になりかなり南です。市役所はもっと震源に近いので、もしかしたら6強よりずっと強い揺れに遭遇したのかもしれません。

この市役所の場合は、2016年の被災を受けた建て直しですが、汚職スキャンダルなどもあったようで、今回の免震構造の破壊についても、当初の性能を疑問視する声があります。ですが、それよりも市全域を震度6強としてしまう認定方法を疑う方が合理的と思います。

例えばアメリカの場合は、地震全体のエネルギーを指すマグニチュードという言葉は知られていますが、震度という概念はそれ自体が社会的にあまり知られていなかったりします。また火山帯や断層に近い地区でも日本のような耐震性や免震技術への関心は高くありませんし、コストを投入する習慣も弱いのです。そうした事例と比較すると、日本の防災・減災意識は非常に高いのは事実です。

それだけではありません。防災・減災ということでは、2016年の地震から10年を経て、復興した住宅を含めてこの地域の多くは免震・耐震建築となっており、その成果から、倒壊の事例数はかなり抑えられています。また、新幹線の場合は2016年の回送編成の脱線事故を重く見て、対策が徹底された成果が出ているようです。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 「震度7」に耐える免震・耐震技術でも破損。令和8年熊本地震の「想定を超えた揺れ」が明らかにした“現行基準の弱点”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け