「生活支援」の発想が、古い
第3に、この問題は外食関連業界への影響だけではない。
現代の生活様式は大きく変化している。 「外食しないで、自炊すればいいじゃないか」という発想だけでは、もはや現実に対応できないのだ。
例えば、子供のいる共働き世帯は、残業を終わらせてから、保育園へ迎えに行ったり、塾や病院へ連れて行ったりして、帰宅時にはヘトヘトだ。
スーパーへ食材を買いに行ったり、料理したりする時間も体力も削られていて、ファミレスや牛丼、うどん、ファストフードなどのチェーン店を利用することが、家事の負担を減らす手段の1つになっているというケースは少なくない。
介護に追われている人も同じだ。 「今日はもう食事が作れないから外食」「疲れた日はファミレスが命綱」という声は珍しくもない。
外食は、もう「贅沢」「特別なこと」だけではなくなっているのだ。
だが、「裁縫」や「アイロン」を政治家としてのアピール材料にしてしまう高市の頭のなかは、いまだに「専業主婦の妻が夕食を作って待っている」という昭和の家族像があるのだろう。 共働きが当たり前になった社会の現実も、外食が生活を支えるインフラになった現実もわかっていないのだ。
スーパーの食料品さえ安くしておけば生活支援になる、という発想そのものが、時代遅れなのである。
で、財源は?
第4に、冒頭にも書いたが、減税に充てるための財源が見えない。
高市は「赤字国債の増発には頼らない」と言う。 第387回「首相は日本国債の『信用保証人』である」で書いたが、今年1月、高市が衆院解散会見で「積極財政」と「食料品2年間消費税ゼロ」をダブルで打ち出したために、金融市場で日本の財政運営への不安が広がり、長期国債の価格が暴落、日本の信用を国際的に揺るがす事態に発展するという出来事があった。
巨額の財政赤字を抱える国の首相が、選挙を有利にするために「国債を増発して借金をさらに増やしつつ、税収は減らします」と宣言したのだから、警戒されたのは当然だった。
迂闊な高市も、さすがに慎重にならねばならず、同じことはもう言えない。 そうなると、別の税を引き上げるのか? 社会保険料を上げるのか? 医療や介護の自己負担を増やすのか?
あるいは新たな税を作るのか? それとも社会福祉をごっそり削るのか?
いずれにせよ、どこかで必ず国民が負担しなければ、減税の帳尻は合わないのだ。
「減税や現金給付で生活費をばらまく」という政策をとる以上、国民負担は消えない。 目立たない場所へ移されるだけなのである。
このことを「コスパ」にこだわる若者こそが見抜いてくれたらと考えてしまうが、SNSやヤフコメなどの反応を見ていると、やはり「減税してほしい」という感情のほうがはるかに強烈で、そうもいかないようだ。
マスコミによる高市批判も、「減税反対、増税しろ」ではなく、「無責任な減税は危険だからやめろ」という論調なのだが……。
私は毎年、自分で貸借対照表を作って確定申告し、時には税務署からの問い合わせに対応したりして、所得税も消費税も住民税も「うぅ~」と痛い思いをしながら現金で納付している身なので、「減税」と聞けば、「え、その減収分、何と相殺するの?」と考えてしまう。
だが、会社勤めだと、給料から源泉徴収され、給与明細の数字を見るだけになるので、納税者としての感覚があまり敏感にならないのかもしれないとも思う。
ほかにも専門的に洗い出せばまだまだ問題点が見つかるであろう今回の消費減税策だが、高市の打ち出す政策は、総じて「目の前の支持率」をつなぎ止めるためのものばかりで、そこに国家像も未来への希望もまったく感じられない。
皇統問題では、皇室を「女性は男子を産まなければならない」という男尊女卑の象徴にしてしまい、「これから日本に新しい時代がやってくる」というような気持ちにはなれないし、逆にこの先には不穏な暗雲が立ち込めているようにしか見えなくなった。
経済政策では、未来の負担を国民から隠して、「目の前の生活費」で釣ろうという姑息な悪政しかできず、これから人口減少に向かっていくこの国家をどう運営していくかという大きな視野を展開していくような議論はどこにもない。
これで、明るい展望など持てるはずがないだろう。
ポピュリズムは、国民を「今だけ」気分よくさせる政治で、麻薬のようなものだ。 効き目が切れれば、もっと薬が欲しくなる。 取り上げられそうになれば暴れたくなる。 そうして日本は、社会全体が副作用に苦しむ未来に突き落とされるのだ。
高市早苗は、明日の自分の支持率を買うために、日本の未来を犠牲にしている。 こんな人間を首相にしていてはいけない。
(メルマガ『小林よしのりライジング』2026年8月4日号より一部抜粋・敬称略。続きはメルマガ登録の上お楽しみください)

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