911が原因で起きた「3つの分断」で米国は崩壊へ。報復戦争・リーマンショック・コロナ禍が生んだ「トランプ運動」という世界的な災厄

 

現実となった被災地ニューヨークが心配していた現象

1つ目はアフガン、イラク戦争の勃発による「分断」でした。ニューヨークの人々が献血に行列していた一方で、中西部を中心に「草の根保守」が大量発生していました。彼らは募兵所に行列して戦争に志願していったのです。被災地ニューヨークが心配していたのは、そのような現象でした。アメリカに残る開拓時代の気風からすると、報復衝動を抑えられない、そのような心配です。

結果的に戦争は現実のものとなりました。戦争はアメリカと国際社会を分断しつつ、原油価格をはね上げることで、クリントンの実現したポスト冷戦の平和と繁栄を壊してしまったのでした。

前述したように、現政権を支えるグループにはアフガン、イラク戦争への不支持を公言する層が入っています。トランプ氏自身もそうした言動を隠していません。まるで昔の左派の反戦運動のように「軍産共同体」を嫌悪し、特にディック・チェイニーを否定、「他国の政権交代に関与するな」をスローガンにするといった態度です。責任をバイデン氏になすりつけつつも、アフガンにおけるタリバン支配を最終的に容認して、以降の事態を無視しているのも事実です。

そうではあるのですが、一方で現政権の中にも「強いアメリカ」を演出することは選挙にプラスだとか、「戦時」を演出することが有利という感覚は残っているようです。強引にイランとの軍事紛争を進め、止めるようで止めないという奇妙な姿勢を保っているのにはこの要素があると考えられます。

2つ目の分断は、リーマンショックとオバマ時代に起きました。戦時不況から強引に景気を戻したブッシュ政権ですが、強引さの結果として大きな負の遺産が生じてしまいました。具体的には、不動産ローンにおける過度の与信、つまりサブプライムローンの膨張でした。不動産の高騰が続くことを前提とした無理な貸し出しは、2007年のベアスターンズ破綻という結果を招きました。ですが、この時点におけるウォール街は危機感が乏しかったのでした。

その結果が、リーマンショックでした。リーマンブラザースの破綻が、2008年9月15日、つまり911の7年後ということになります。この時点では、バンカメ、メリルなどが厳しい状況に陥る一方で、ゴールドマンなどは逆張りで儲けていたなどウォール街では荒い動きが続いていました。そんな中では与党が政権を保つのが無理ということもあり、政権交代でオバマが登場することになったのでした。

金融危機と株安が深刻化したのは、むしろ2009年に入ってからでした。大恐慌以来という厳しいトラブルの渦中に就任したオバマは最悪の不況から米経済を回復させることに集中したのでした。運の悪いことにこの時期は国際分業とDXが加速してゆく時代でもありました。ブッシュ前政権の時代から、米中の経済提携は蜜月時代に入る中で、「世界の工場」である中国がアメリカ企業のサプライチェーンに組み込まれて行きました。

こうした国際分業もDXも景気回復には必要には違いありません。ですが、同時に国内に目を転じてみると雇用低迷という強い副作用を伴っていたのでした。まず、憤った若者たちは、ウォール街から全国へと「占拠デモ」の旗を掲げるようになり、これが民主党左派として現在に至る「党内の分断」の契機となったのでした。一方で、共和党内では公費を投入した景気対策への反対運動として茶会が勢力を伸ばしていました。

今から思うと興味深いのですが、茶会はダイレクトな景気対策に思い切り反対していた一方で、占拠デモのグループは金融機関への公的資金注入に激しく反発していました。前者は、そのまま雇用対策になっていたし、後者は普通株の取得をして後に売却益を生じていたので国庫からの持ち出しはありません。ですから、認識不足から来る不満という評価も可能なのです。ですが、この2つのグループは大真面目であり、現在に至る分断の萌芽となっていたのだと思います。

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