コロナ禍が浮き彫りにした現業労働と知的労働の絶望的格差
3つ目はコロナ禍というトラブルでした。全米でいち早くクラスターの発生と大量死を目撃したニューヨークは、人命を優先して知的労働をフルリモート化しました。これはストレートに都市昼間人口の激減と治安の悪化をもたらしました。と同時に、現業労働と知的労働の間にある絶望的な格差を浮き彫りにもしたのです。コロナ対策への賛否をめぐる分断については、実は保守的な中西部や南部が発火点です。製造業が空洞化で消えた地域では、サービス業に従事する人が多く、そこをコロナ禍が直撃したことで、営業権が侵害されたという被害感が生じました。
感染対策という名の強制力に対して、保守州の人々の恨みは今でも尽きず、現時点ではファウチ博士を議会で尋問するという魔女狩り的な行為が続いています。と同時に、知的産業がコロナ禍でもビクともしなかったことへの恨みも残っているのです。
こうした3つの分断を政治化して、その分断エネルギーを集約する形で、右派ポピュリズムによる結集を政治化したのがトランプ運動というわけです。強いアメリカの演出、国際法を軽視した軍事力行使、極端な行革による連邦政府の破壊、そして都市に対する地方の反発意識、感染対策を強制された怨念…こうしたモメンタムを巧妙にミックスしたのが現在の「保守運動」だといえます。
911からの25年、ニューヨーク自身は苦しみながら繁栄を維持してきたのは事実だと思います。その一方で、そのニューヨークを起点とした動きが全米を揺さぶり、現在の分断社会を招いたとも言えます。ニューヨーク発の出来事が、そして社会運動が全国へと影響を与えてきた、このことは否定できないと思います。では、この先のアメリカにおいて、ニューヨークは何をしてゆけばいいのでしょうか。
まずは、マムダニ市長や地元選出のオカシオコルテス議員(AOC)などに徐々に大きな期待が寄せられる状況があります。民主党の左派ということでは、バーニー・サンダースというヴァーモント州出身の大きな存在がありますが、占拠デモにしても、AOCにしてもマムダニ市長にしても、他でもないニューヨークが産んだ存在といえるでしょう。
そんなニューヨーク発の左派運動ですが、より多くの支持が集まる中で、現実主義へ歩み寄って分断を緩和できるかがまず課題だと思います。勿論、これは簡単なことではありません。民主党内の穏健派は、グローバル経済とイスラエルを支持することから、左派とは不倶戴天の関係にあります。そんな中で、中絶問題と多様性認識、環境という社会価値観だけで辛うじてつながっている状況です。この危ない関係をどうするのか、これがまず課題です。
現時点では、穏健派のジェフリーズ下院院内総務などは、「予備選を勝った候補は民主党候補としてしっかり応援する」としています。今回の中間選挙はこれでゴマかせるかもしれませんが、次の大統領選予備選は大変です。ハリス?ニューサム?といった穏健派と、AOCなどとの抗争は厳しいものになるでしょう。ここで党の結束が保てるかは、アメリカを大きく変えていくことになると思います。
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