真田丸『第14話』解説。北条家はいつから秀吉の「敵」になったのか?

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 NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回はドラマ本編の内容を離れ、同時期の東国情勢について。天正壬午の乱で家康と和睦し、北関東で攻勢を強め始めていた北条氏。彼らを秀吉が敵対勢力と見なすきっかけになった「一連の動き」とは? 『真田丸』の戦国軍事考証を担当する西股総生さんが詳しく解説します。

今回のワンポイント解説(4月10日)

今回は、ドラマでは描かれていない、同時期の東国情勢について説明しておこう。第1次上田合戦の前の年、つまり昌幸が室賀正武を粛清して小県を統一しつつある頃、家康と秀吉は小牧・長久手の役で対陣していた。この戦いは、尾張における秀吉と家康の対峙に注目が集まりがちだが、 実際には広い範囲で複雑な作戦の駆け引きが展開している。

そうした意味で、この戦いは戦役キャンペーン)として捉えるべきだから、僕は「小牧・長久手の役」という言葉を使う。あっ、戦役(キャンペーン)の意味が知りたい人は、僕の『戦国の軍隊』か、『東国武将たちの戦国史』第8章を読んでね!

一方、天正壬午の乱で家康と和睦した北条氏は下野方面で攻勢を強め、宇都宮氏・結城氏・佐竹氏を中心とした「北関東連合を圧迫。小牧・長久手の役と同じ頃、両軍は下野の沼尻というところで対陣していた。結果として、沼尻では大きな決戦が起きることもなく、小牧・長久手の役の収束と併行して、グズグズのまま講和してしまう。

けれどもこの時、氏直と家康は同盟関係にあったから、「北関東連合」は北条・徳川同盟に対抗するために、秀吉に接近していた。そこで、秀吉はこの戦いを境にして、北条家を敵対勢力と見なすようになった。小田原の役にいたる動きは、実はここからスタートしていたのだ。

ちなみに、北条氏政という武将は、生涯を通じて大きな決戦で華々しく勝利したような戦歴に乏しい。でも、氏政の時期になると、戦いは長期間にわたる複雑な戦役(キャンペーン)の形を取ることが多くなり、決戦一発でカタがつくほど単純ではなくなっていた。それに、関東では北条家は着々と一人勝ち体制を固めつつあった。そんな立場にある氏政の戦略は、勝つことより、負けないことが基本。リスクを取って決戦に打って出るのはチャレンジャーの戦略であって、この頃の北条家はチャレンジャーではなかったからだ。(西股総生)

 

今週のワンポイントイラスト

様々な家に人質に出ている信繁。好奇心旺盛に現場の空気を感じ、そのニーズに応えるのが得意そう。真田紐も案外そんな信繁の性格から生まれたのかも…!?

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書泉グランデのトークショーにご来場いただいた方は、今回の 1 コマを 2 倍楽しめるはず!(みかめ)

きりちゃん、相変わらずうざいですね。でも、信繁にとって彼女がマジうざいのは、お互いが常に本音をぶつけ合っているから。今の信繁にとっては、きりちゃんのうざさが案外、救いになっているのかも。(西股総生)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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