菅首相が意欲を示し、突然その名が報道されるようになった「こども庁」の創設ですが、その理念や志とは別に、具体的なイメージが見えず、国民はピンときていないのが現状です。今回のメルマガ『伝説の探偵』では著者で現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、「こども庁」の創設がいじめ問題の解決につながることを期待しつつも、文科省や国と、地方自治体の教育委員会や学校との間に意識や予算の「格差」があると指摘。文春で報じられた「旭川市中2凍死事件」などのいじめ問題を例にあげながら、「理想」としてのこども庁創設と、現場の「現実」とが乖離している現状を告発しています。
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突然浮上の「こども庁」創設話。出来てみないと分からぬビックリ箱
3月の中旬、降ってわいたのかように「こども庁」創設案が飛び出してきた。
実は、いじめ問題の専門家の間ではそれ以前から、こうした動きがあることは話が出ていたが「わいせつ教師排除の流れ」もまだできていないのに、より複雑な権利関係や法律、省庁間の駆け引きがあろう「こども庁」については、 多くの専門家が懐疑的に見ていた ところがあった。
こども庁とは何か
「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会事務局」が作成した資料によれば、5つの柱があるという。
こども庁の5つの柱
・子どもの命を守る体制強化
・妊娠前・妊娠期からの継続支援の充実
・教育と保育に関わる子どもを安心して育てられる社会環境の整備
・妊娠期から成人まで、子ども目線での切れ目のない教育と健康の実現
・子どもの成長を社会で守る一貫した環境整備
多分、できたら素晴らしいと思うが、 正直なところ、これだけではフワッとしていて、具体的に何をするのかよくわからない。簡単にわかる具体策といえば、縦割り行政の改善だろう。
例えば、 幼稚園は文科省、保育園は厚労省、認定こども園は内閣府というように子どもに関係する行政はバラバラになっている。こうしたところを一か所にまとめるというメリットはあるだろう。
また、予算規模を欧州並みのGDPの3%にするという。 金額でみれば8兆円規模になり、予算を大きく増やすことになる。
さらに児童虐待、いじめや自殺、不登校の問題にも切り込み、「子どもの権利条約」に規定される子どもの権利を守るために行政機構自体の見直しも図るというのだ。
もちろん、具体的な他の策もあるし、勉強会やアンケートなどから受け取った意見から考えた策もある。
つまり、「こども庁」についての緊急提言や立法をしようとしている議員のインタビューから出る施策は、どれも今起きている問題にメスを入れようとしていると言える。
もしも、これが実現するのであれば、その意義は大いにあると言えるだろう。
「子ども庁」創設に浮上した、いくつもの懸念材料
現状、新聞報道をみれば、文科省案と内閣府案などがあり、子ども庁をどのように作るかの議論が進んでいるという。
ただ、ハッキリ言えるのは、日本の行政は「スクラップアンドビルド」を取っているということだ。
スクラップアンドビルドとは、何かの課が新たにできれば、その分どこかの課がなくなったり、人員が整理されるということであり、これは新設される部署や予算が肥大化しないために行われていた。しかし、この考え方が採用されてから特に業務が多くなった厚生労働省などは、ブラック企業よりもブラックな労働環境にさらされている状態になっているという。つまり、よくある無謬性として、一度決まってしまえば、それが社会情勢や環境と合わない状態に陥っても見直されることはないという問題がある。
私が省庁関係者から聞いた話では、各省庁の職員を中心に子ども庁ができた場合は子ども庁へ移動が始まる。当たり前の話でもあるのだが、人員としての強化策はあっても限定的であり、ほとんどないとみてよいところがある。
結局、「子ども庁」もスクラップアンドビルドという概念の中にあると言えるだろう。
もちろん、もともと各省庁で対応していた職員が移動となり、専門職さながらに対策対応を行うという意味もあるから、これは心強いところであろうが、結局は文科省案も内閣府案も一部移管ということに留まることから、単に分散されることが懸念され、余計に事務管理が複雑になるのではなかろうかという心配が生じるのだ。
とにかくできてみないとわからないという「びっくり箱」では、コロナ禍で不安定になっている教育行政に、より不安を与える結果になりはしないだろうか。
これは私見だが、もっと実現可能で具体的な施策をしてから「子ども庁」創設を発表した方がよかったのではないかと思うのだ。
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