プーチンの大罪。ウクライナ戦争で西側諸国が直面する「7つの難問」

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ロシア軍によるウクライナ市民に対する虐殺行為までもが発覚し、ますます高まる国際社会からのプーチン大統領への批判。21世紀の独裁者が仕掛けた侵略戦争の影響は、もはや当事者間の問題を遥かに超え全世界に波及しているようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、ウクライナ紛争を巡り我々が直面することとなった問題7つを列挙。それぞれについての詳細な解説を記すとともに、解決の困難さを説いています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年4月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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ロシア=ウクライナ戦争をめぐる7つの論点

毎週このコラムで、ウクライナ情勢を検討していますが、先週から今週にかけては、停戦という問題を意識した駆け引きが激しくなっているのを感じます。とは言っても、戦争というのは一旦始まってしまうと、止めるのは非常に難しいわけです。例えば、ベトナム戦争の場合は、アメリカと南ベトナムの連合は、全国におけるゲリラ戦でほぼ完全に敗北し、勝利の可能性はほとんど無くなってからも、まだ数年にわたって戦闘を続けました。

理由は2つあり、1つは膨大な犠牲と戦費を注ぎ込みながら撤退するというのは、その撤退を決断した政治家の政治生命を奪う危険があるからです。臆病者、裏切り者という汚名、自国兵士の犠牲を無駄にするという非難に抗して、戦争を停止するには大変な政治的パワー、つまり権力が必要ですが、戦況が不利となった場合のリーダーにはそのような権力は期待できないからです。

もう1つは、ここで自分達、つまり「正義の側」が敗北するということは、普遍的な理念が敗北したこととなり、単なる1つの戦争を失っただけでなく、その地域全体、あるいは地球全体における「正義の敗北」と考えられるからです。ベトナムの場合は、当初から「東南アジアがドミノ倒しのように共産化するのを防止」というのが戦争の建前でした。撤兵し、敗北を認めるのは「ドミノ倒し」を認めることになるわけです。

そうした一般的な理屈を考えてみますと、今回のロシア=ウクライナ戦争における停戦の可能性というのは、少し特殊な感触があります。というのは、第一の条件、つまり双方の政権が、停戦を実行するだけの権力を持っているかというと、この点はどうやら「イエス」と言えそうだからです。

では、停戦は簡単かというと、やはり現状は確かに難しいと言わざるを得ません。停戦により、それぞれの「正義」が挫折するということになれば、停戦が次の対決の原因になってしまいます。ウクライナの側としては、民主的にオーソライズされた国民国家が蹂躙されたわけで、その回復という正義は絶対的と考えられそうです。

一方で、ロシアの側としては、旧ロシア連邦の内部では一切の独立を認めない一方で、旧ソ連圏で非ロシアの国家は独立は認めるが、NATO入りは認めないだけでなく、一切の敵対可能性を排除するというのが、どうやら彼らの「正義」であるようです。更に、彼らの独自の定義による「ロシア人」の安全確保ということも含まれていそうです。

具体的にこうした条件を詰めて行く、例えば東部地域(ドンバス)の自治の度合いをどうする、クリミアの位置付けをどうする、ドンバスとクリミアを結ぶマリウポリを含む回廊をどうする、といった条件に関しては落とし所があるかもしれません。ウクライナの「中立」ということも、民主国家としての主権の自由な行使という問題を含めて、ウクライナの利害、ロシアの利害を3元連立方程式とした場合に「解なし」にしない方策はあると思います。

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