2023年「台湾有事」で必勝を誓うアメリカの本気度。日本はどうだ?

2022.12.25
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軍事侵攻にこそ至らなかったものの、今年も極度な緊張状態が続いた台湾情勢。2023年、台湾を巡る米中対立、そして中台関係はどのように推移していくのでしょうか。これらについて詳しい解説を試みるのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回、台湾問題をさまざまな視点から分析するとともに、今後の展開を予測しています。

地政学的に「悪化」の一言だった今年の台湾情勢

2022年も終わりが近づいてきた。今年世界を最も震撼させた出来事はロシアによるウクライナ侵攻だったが、世界経済や日本の安全保障への影響を考えれば台湾有事はウクライナの比ではないだろう。その台湾有事を巡っては今年大きく緊張が高まった。今年の台湾情勢を振り返れば悪いことしかなかったと言える。本稿ではその中身について、中台関係と米中関係の悪化を簡単に振り返りたい。

まず、中台関係である。独立志向の強い蔡英文政権は米国を筆頭にフランスやオーストラリア、リトアニアなど欧米諸国との関係を強化し、近年そういった国々の指導者層レベルが相次いで台湾を訪問したことで習政権は不満や苛立ちを強めている。

本来であれば、緊張を和らげる意味でも蔡英文氏と習氏が対面で会談することが重要であるが、今日そういった雰囲気は両者の間で皆無だ。中国は台湾へ圧力を掛けるため、軍事演習や経済制裁、サイバー攻撃などあらゆる手段を使っている。

近年では台湾産のビールやサンマ、パイナップルや柑橘類、高級魚ハタなどの輸入を一方的に停止するなど、台湾を経済的に弱体化させることに躍起になっているが、台湾は第3国への輸出を強化しており、効果は薄いようだ。

台湾有事を見据えれば、時間が経過すれば経過するほど、中国が取れるオプションの範囲は狭まってきており、軍事的手段という選択肢の幅が拡大してきているようにも思える。そのような中、今年8月にペロシ米下院議長が台湾を訪問したことで、中国による軍事的威嚇はこれまでにない大規模なものになった。

中国軍による台湾を包囲するかのような軍事演習、台湾周辺に向けてのミサイル発射、中国軍機による中台中間線越え、台湾離島へのドローン飛来など、中国はこの時を待っていたかのように軍事的けん制を強めた。今日の中台関係はこれまでになく危険な領域まで来ている。

民主主義と権威主義との戦いの最前線となりつつある台湾問題

次に、米中対立だ。オバマ政権は中国に対して弱腰だと批判されたが、トランプ政権は中国に対して関税引き上げや輸出入制限を強化するなど米中の間では経済摩擦が激しくなり、バイデン政権も中国を唯一の競争相手と位置付けるなど、米中対立は経済から貿易、安全保障や人権、サイバーや技術など多方面に渡り、中国との戦略的競争を外交安全保障政策上の最優先事項に位置付けている。

トランプとバイデンは性格やビジョンが全く異なるように見えるが、対中国では同じ強硬路線であり、そこには連続性がある。そして、上述のように台湾が欧州やオーストラリアなど米国以外の欧米諸国と関係を強化し、近年英国やフランスなどがインド太平洋への関与を強めるなか、台湾問題は単なる地域問題ではなく、欧米の民主主義と中国の権威主義との戦いの最前線となりつつある。

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