トランプの「米中は偉大なG2」という二重三重の大間違い。“劇場型軍国主義”を演じるしかないアメリカという迷惑国家

th20260526
 

トランプ大統領と習近平国家主席の会談を経て、世界秩序の新たな枠組みを巡る議論が加速し始めた国際社会。今後の米中関係は、どのような方向に進んでゆくのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、習主席が会談で「トゥキュディデスの罠」なる言葉を持ち出した意味について詳しく分析。さらに北京でトランプ氏が見せた従来とは異なる姿勢から、アメリカが置かれている立場について論考しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:「トゥキュディデスの罠」を避けて

プロフィール高野孟たかのはじめ

1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

周到に準備してトランプを迎えた習近平。「トゥキュディデスの罠」を持ち出した意味

前号では、今回の中米首脳会談を端的に要約すれば、「すがるトランプ氏、突き放す習氏」という図柄であり、その中国の姿勢の裏には「この先、米国が衰弱していくとの確信」(5月17日付日経新聞)が横たわることを指摘した。

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習近平主席が「トゥキュディデスの罠」の喩えを持ち出したことの意味も、その文脈で理解しなければならない。

米中が戦うことになる「たった一つ」の要因

アテネの歴史家=トゥキュディデスは大著『戦史』(岩波文庫で上中下3冊!)の中で、支配的な大国=スパルタに対して新興の強国=アテネが台頭しトップの座を脅かし始めた時に、スパルタが恐怖を抱きギリシャ全土を二分するペロポネソス戦争が起きたが、結局アテネの敗北に終わったことを記述している。

これをハーバード大学ケネディ行政大学院の初代院長で政治学者のグレアム・アリソンが2017年の著書『運命づけられた戦争』(和訳『米中戦争前夜』、ダイヤモンド社、17年刊)で取り上げ、覇権国と新興国の衝突は不可避ではないが避けることは難しく、そのため数十年以内に米中がこの「罠」に嵌って戦争に突入する可能性は非常に高いと主張した。

この説については、学問的見地からもジャーナリスティックな視点からも様々な批判があるが、それはさておいて、習近平がこれを引きながら「中米は新たなパラダイムを構築することが出来るのか」と問いかけたのは、大胆に推測すれば次のような意味だろう。

  1. 中米両国は絶対に戦争を避けなければならない。
  2. 中国側に米国と戦争しなければならない理由は何も存在しない。
  3. ただし、台湾の一部勢力が独立を宣言し、それを米国が支持して介入するようなことがあれば、
    (a)中国は一つであり、台湾は中国の領土の不可分の一部であるから、その失陥は例え武力を用いてでも阻止するのが当然である。
    (b)それに対し仮にも米国なり日本なりが軍事介入すれば、それは明白な侵略であるから、中国がそれを全力で排除するのは当然である。
    (c)中米は共に核保有国であり、全面戦争となればICBM(大陸間弾道弾)を撃ち合って世界を破滅に陥れる危険もある。従って、中米戦争を避ける上で決定的に重要なのは、米国が台湾の独立を扇動したり容認したり支援したりしないことで、それさえなければ中米が戦うことにはならない。
  4. そのための新たな枠組みとして「建設的な戦略安定関係」を提案する……。

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