習近平がわざわざ北朝鮮に足を運んだ理由は「米朝首脳会談」という“特効薬”実現のためだ

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東アジア情勢を左右する重要な舞台である朝鮮半島。近年は比較的落ち着きを見せてきたようにも窺われますが、水面下では新たな緊張の芽が生まれつつあるようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、習近平国家主席がわざわざ北朝鮮を訪問した背景を分析。さらに中国が北朝鮮との関係を重視する理由と、朝鮮半島を巡り高まりつつある各国の思惑について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:習近平の訪朝で強調された朝鮮半島に広がる不穏な空気

中国の狙いはどこにあるのか。習近平の訪朝で強調された朝鮮半島に広がる不穏な空気

「これでもか」という大歓待だった。

6月8日から9日にかけて中国・習近平国家主席が北朝鮮を訪問した。そのときの北朝鮮の歓迎ぶりの話だ。

5月にはアメリカのドナルド・トランプ大統領が訪中し、直後にロシアのウラジミール・プーチン大統領が北京を訪れた。そのとき中国は子どもから大人までを動員して派手に出迎えた。その歓待ぶりに目が慣れていたはずだったのに、今回テレビに映し出された習主席の北朝鮮訪問の映像には驚かされた。

金正恩朝鮮労働党総書記・国務委員長も自ら空港で出迎え、車で移動する際には、沿道のマンションの窓という窓から住民が顔を出し、ずっと手を振っていた。

帰国時には離陸する習主席の飛行機に手を振る映像まで流された。

金総書記が空港で誰かを出迎える画像は2年前のプーチン大統領の訪朝以来のことではないだろうか。

こう書くと、まるで北朝鮮を挟んで中国とロシアが綱引きをするという、西側メディアが大好きな話題なのかと思われそうだが、そうではない。

私はむしろ、今の中国にとってロシアと北朝鮮への影響力を競う意味は、ほとんどなくなったと考えている。

2022年にウクライナに侵攻し世界から孤立したロシアとは違い、中国は全方位のスキのない外交を展開している。その視点からすれば、北朝鮮との関係はむしろ「両刃の剣」でさえある。

ロシアとともにウクライナと戦う北朝鮮は、欧州の国々から見れば「敵」であり、中国がヨーロッパ連合(EU)との関係を深めようとすれば、マイナスに作用しかねない。韓国との関係改善という流れでも、それは微妙である。

ただ、それでも中国にとって北朝鮮との関係は重要だ。そのことは習近平訪朝を伝えた中国メディアのフィーバーぶりからも伝わってくる。

この好悪の加減をどう考えたらよいのだろうか。

まず整理しておかなければならないのは、中国にとって北朝鮮との関係強化は、ロシアの朝鮮半島への影響力を排除する目的ではなく、あくまで中朝二カ国の関係強化に重心が置かれているという点だ。

朝鮮半島の現状を考えれば、対ロシアより対アメリカの方がはるかに重要であり、その点ではロシアも少なからず利害を共有している。

どういうこだろうか。頭の体操だが、もし今、アメリカがベネズエラにやったような軍事作戦を朝鮮半島で実行したらどうなるのか、という話だ。

ベネズエラに対する軍事力の行使に比べればイランに対する攻撃は中国にとってはるかに深刻であった。しかしそれがもし朝鮮半島で再現されるようなことになれば、イラン攻撃など比較にならないほど大きな災厄が中国と朝鮮半島に降りかかることになる。

そんな東アジアの危機が、中国の手の届かないところでエスカレートするとするとなれば、なおさら中国にとっては耐え難い展開といわざるを得ない。

私は先に「頭の体操」と書いたが、その可能性はゼロではない。

つまり今回の訪朝は、そんな危機を自らのコントロール下に置くため、トランプ大統領と金正恩総書記の間に立って、調整するためだと考えられるのだ。

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