騙され続けて27年。ニッポンの消費税導入「失敗」の歴史を振り返る

2016.01.11
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安倍首相は1月10日、TV番組で2017年4月に予定する消費税率10%の引き上げについて「今度は景気判断は行わず、リーマン・ショックのようなことが起こらない限り、予定通り引き上げていく」と述べました。過去を顧りみれば、消費税導入までの道のりは断念と失敗の連続でした。ジャーナリストの嶌信彦さんは、自身のメルマガ「時代を読む」の中で、消費税の「失敗の歴史」を振り返りながら、日本国民を騙してきたとも言える多くの疑問や問題点を指摘しています。

公平、公正、簡素、赤字解消の基本に戻れ

税金──とりわけ消費税は国民一人一人の毎日の生活にかかわってくる税金だけに国民の関心はどこでも高い。それだけに、税金に対する基本的な哲学考え方を国民が共有しておくことが重要になってくる。

税の基本哲学とは、まず「公平」「公正」「簡素」といわれる。誰に対しても公平な税制であり、何よりも公正でなくてはいけない。そして税の仕組みはできるだけ簡素でわかりやすいものするというのが税制を国民のものにする民主主義の源であり、最近はこれに加えて財政赤字を食い止める手段としても大きく期待されてきた。

日本に消費税導入論が本格的に叫ばれたのは、1979年1月の大平正芳内閣時代で、1月に一般消費税を閣議決定している。しかし、これは10月の総選挙中に導入を断念し、選挙の勝利に賭けたが総選挙も大幅に議席を減らし敗北してしまう。政治家にとって消費税を口にすることは鬼門とされるようになる。

消費税導入失敗の歴史

大平政権時代の後、消費税が大きな政治課題となったのは約10年後の中曽根康弘政権時代だ。1987年2月に「売上税」法案として国会に提出した時だ。もともと、中曽根氏は「大型間接税はやつるもりはない」と主張し、衆参同時選挙を仕掛けて大勝、政権基盤を安定化させた。そこで満を持して1987年2月に「売上税」法案を国会に提出したが、国民は圧倒的に反対を唱え統一地方選で敗北し、5月には廃案となってしまう。消費税を提案することの難しさをあらためて認識させることになる。

1989年に竹下登内閣が登場すると、竹下首相は財政赤字解消には消費税導入が不可欠と税務当局にも懇願され、不退転の決意で消費税導入を訴えた。70年代から80年代にかけて公共事業に予算を使いすぎ、財政が赤字になってきて、法人税や所得税、相続税など既存の直接税の税収だけでは予算が賄えなくなってきたためだ。

しかし、街中では消費税反対を訴えるダンプカーデモや商店街のアーケードに「弱い者いじめの消費税は断固反対」の看板があちこちに立てられた。それでも12月24日に、消費税導入を柱とする税制改革6法案が社会党、共産党欠席のまま自民の賛成多数で可決し成立した。1989年4月1日から税率3%で消費税法を施行したが、その直後にリクルート事件が表面化し竹下首相は6月に退陣した。

一方、自民党政権退陣後の1994年、細川護熙内閣が消費税を廃止し、代わって税率7%の国民福祉税を突如提案するものの、理解が得られず即日白紙撤回。この後できた自民・社会・さきがけの自社さ政権で村山富市首相が税制改革法案を成立させる。消費税を3%から5%への増税内容を決め、その後を継いだ橋本龍太郎首相は「1%分は福祉を充実させる」とし、福祉税の概念を初めて導入した。消費税分は3.2兆円増だった。

社会保障と税の一帯改革を約束

だが翌年の98~99年には成長率がマイナス(-1.8%)となり、税収が減って赤字国債が15兆から30兆円と増えた。この頃から山一證券や北海道拓殖銀行の破綻などもあり不況が続いて税収には消費税が欠かせなくなった。2009年の消費税の累計は、導入以来23兆円に上った。鳩山由起夫政権では「消費増税は絶対しない」と言い切ったが、同じ民主党の菅直人政権では消費税10%を訴えて参院選で惨敗した。

その後、財政赤字の増大と社会保障予算が今後も大幅に増えることが確実となり、民主党の第2次野田政権内閣のとき消費増税と社会保障の一体改革を行う「社会保障・税一体改革関連法案」を自民党と合意した。この結果、2014年4月から消費税率を5%から8%にすることを約束し、総選挙で交代した安倍内閣がその約束を実行した。

しかし2015年に予定していた10%への引き上げは1年半先送りし、2017年4月から8%を10%にすると1年半先延ばしを表明し、今日に至っている。2015年末の税制調査会では8%から10%にする時の2%分については、一般消費者にとって重要な食料品全般の税率だけは8%に据え置く軽減税率を決定。軽減税率制の対象は「酒・外食を除く生鮮食品と加工食品」と決めた。

これにより、外食と加工食品の定義をめぐり議論が混乱し、結局、定食屋やマクドナルドの店内で飲食すると「外食」扱いになり10%、出前やテークアウトなら外食とならず8%になる──など、食べる場所などによって外食か否かの線引きをすることになるといい、わかりにくさが目立つ。このほかにも極めてわかりにくい税体系となっている。

軽減税率でまた混乱

こうして大枠の消費税の内訳や実施時期などがようやく決まったが、決して「簡素」ではないし、「公正」「公平」といったところでもまだ議論される余地が残っていそうだ。

消費税のそもそもの始まりは、今後減っていく直接税(法人税、所得税など)中心の日本の税体系を間接税(消費税など)中心に移行し、一般国民から“広く、浅く”とり、増え続ける財政赤字と社会保障を賄うという点に主眼があった。

しかし、消費税導入に関しては、つねに政治・選挙の争点になり妥協を重ねてきたため、「公平、公正、簡素」の基本枠から少しずつ離れ、財政赤字縮小にも今のところ大きく役立っているようには見えない。これは消費増税によって税収が増えると、結局、財政赤字縮小にまわす分は少なく、再び歳出の財源にしてしまう傾向が強かったからだ。

税の基本哲学を国民で共有すべき

この辺でもう一度間接税(消費税など)と直接税(法人、所得税など)の比率をどのような割合にしたら税収は安定するのか、公平、公正、簡素などの原則にもう一度戻り、財政赤字を減らす方法と哲学を国民全体で議論した方がよいだろう。2~3年おきに税率をいじるような改正を続けていると、税は一段と複雑になり国民に税の本当の意味を理解されなくなるだろう。

image by: Shutterstock

 
ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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