年金598億円が10万人に支給漏れ。過ちはなぜ起きたのか?

nenkin20170915
 

先日飛び込んできた「年金支給漏れ」のニュースですが、その規模は過去最大の10万人分に及び、支給漏れ総額は598億円にものぼるとのこと。これを受け、無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者・hirokiさんは、「情報共有が十分でない共済と日本年金機構の間でいつかこんな日が来ると思っていた」と両者の連携不足を指摘。さらに、あまり聞き慣れない「振替加算」について詳しく解説しています。

大規模な年金支給漏れが発覚した振替加算とは何なのか?

9月13日、ものすごく重大なニュースが飛び込んできましたね。年金支給漏れ598億円で10万人ほど…。支給漏れの平均額が約56万円で、一番金額が多いもので590万円。支払われていなかった分は過去に遡って支払うとの事。今回は振替加算というものでの大規模な支給漏れ。

振替加算の総点検と対応について(日本年金機構)

振替加算については過去によく記事で書いてきた分野ではあります。にしてもいつか、もしかしたら振替加算あたりでこんな日が来るのではないかと思って心配しておりました。

今回は配偶者が公務員だった人が多数ですよね。なぜこんな事が起こったかというと、公務員が加入する共済と日本年金機構は年金の情報は共有はしていませんでした

まず一般的には、例えば夫に厚生年金期間または共済組合期間が20年以上ある年金を貰う時に65歳未満の生計維持している妻が居ると、夫の厚生年金または共済年金に配偶者加給年金389,800円(内訳は配偶者加給年金224,300円+特別加算165,500円)が付きます。

※注意

夫を妻、妻を夫に変えてもらっても構いません。

月額3万円ほどアップする配偶者加給年金とは(まぐまぐニュース参考記事)

そして、妻が65歳になると今度はその夫の厚生年金または共済年金に付いていた配偶者加給年金が消滅して、妻の老齢基礎年金に配偶者加給年金の代わりに妻の生年月日(大正15年4月2日から昭和41年4月1日以前生まれの人に限る)に応じて振替加算というのが付くんですよ。配偶者加給年金から振替えて配偶者の老齢基礎年金に加算するから「振替加算」と呼ばれます。

で、配偶者加給年金が付いていたのが夫の厚生年金であれば、この時自動で妻の老齢基礎年金に振替加算が付くんですが、逆に配偶者加給年金が付いていたのが夫の共済年金だとすると自動で妻に振替加算が付かないんですね。なぜかというと、共済組合と日本年金機構は別の支払機関だからです。

振替加算は加算される場合は必ず老齢基礎年金(老齢基礎年金は日本年金機構から支給されるもの)に加算されるから、別制度である共済年金を貰っていてその共済年金に配偶者加給年金が付いていた場合は妻が65歳になったタイミングで日本年金機構に自ら申し出ないと自動では振替加算を付けられなかったんですね。配偶者加給年金の状況がわからないから。

よく、共済と日本年金機構が情報を連携してくれていたらとてもありがたいんだけどな…と昔から思っていました。まあ、平成27年10月に被用者年金一元化で、共済年金を厚生年金に合わせる大改正がありましたが、情報を共有していくうちに今回の事態が発覚したんでしょうね。また世間で年金不信が強まってしまう事がなんだか悲しいものです…。

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