【高城剛の二重生活のススメ】人口比のレストラン数はナンバー1、美食の街、ブリュッセルでの二重生活のススメ

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ご存知“ハイパーメディアクリエイター”こと高城剛さんのメルマガの人気コーナー「デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ」。タイトル通り日本人がロングステイ(長期滞在)やデュアルライフ(二重生活)するのに適した“理想の地”を模索するという連載です。今回高城さんが取り上げるのは“EUの首都”とも呼ばれるベルギーはブリュッセル。どんな街なんでしょうか。教えて高城さん!

高城未来研究所「Future Report」

第1回 ベルギー「ブリュッセル」(全4回)

ベルギー王国(Kingdom of Belgium)、通称ベルギーは四国の約1.5倍、人口1,122万人(2014年10月/外務省、基礎データ)の小国ながら、非常に存在感のある国だ。地理的には、北部が北海に面し、フランス、ルクセンブルク、ドイツ、オランダとそれぞれ国境を接していて、古くから“ヨーロッパの十字路”と呼ばれてきた。ドイツやフランスなどの強国に翻弄され、その歴史は決して平穏ではなかったが、西ヨーロッパの中央という地の利を生かして、交通の要衝として栄えてきた。国土の中央よりやや北部に位置する、首都ブリュッセル(Brussels)の人口は116万人。EUの本部をはじめとする主要機関の多くがこの地に置かれているため、EUの首都とも呼ばれている。そんな小さいながら多彩な魅力を持つブリュッセルを、4回にわたってじっくり紹介していきたい。

早速、ベルギーまたはブリュッセルに行く前に、押さえておきたいポイントを以下にまとめよう。

 

(1)日本からのアクセス

2014年12月現在、日本からベルギーおよびブリュッセルへの直行便はなく、近隣国などの都市を経由して入国することになる。一般的なのは、KLMオランダ航空でアムステルダムまで飛んで、そこから列車で移動する方法だ。KLMオランダ空港は、成田、関空から毎日、福岡から週3日運航していて便利なため、周辺都市が目的地の場合も多く利用されているエアラインだ。アムステルダムからブリュッセルまでは、国際高速列車タリスで2時間弱。KLMで日本を午前中に出れば、アムステルダムには夕方に到着するので、そのまま列車で移動すれば、同日にブリュッセルへ入ることは十分に可能だ。

荷物が多いなどの理由で列車の移動を避けたい人は、ロンドン、フランクフルト、パリなど周辺国の都市でトランジットしてブリュッセル空港に入る方法もあるだろう。もちろんアムステルダムからの飛行機移動も可能だ。ブリュッセル空港は市街から北東約15kmの郊外にあり、列車を利用すると約20分ほどかかる。空港の地下1階に国鉄の駅があり、エアポート・シティ・エクスプレスが、朝の5時台から24時台まで15~20分間隔で運行している。中央駅までの料金は一等で9.6EURO(約1,410円)、2等で7.8EURO(約1,146円)タクシー利用でも市内までの所要時間は20分ほどだが、朝夕のラッシュ時は30分以上かかることもある。料金はメーター制で、40EURO(約5,876円)程度。

ベルギーの時差は、ほかのヨーロッパ諸国と同じく、日本のマイナス8時間。サマータイム実施中の3月最終日曜から10月最終日曜までは、マイナス7時間になる。

 

(2)気候

日本と同様、四季がはっきりしているが、一年を通して東京よりも涼しい気候といえる。の訪れは東京より遅く、4月頃から徐々に花の季節を迎える。ただし5月下旬くらいまでは天候が変わりやすいので、重ね着のできるものが手放せない。6~8月の間は、日中の気温が30度を超えることもあるが、カラッとしていて過ごしやすい。ただし日差しは日本よりも強烈だ。夜は21時過ぎまで明るいが、夏場でも朝夕は肌寒くなるので、日本と同じ感覚で過ごしていると風邪をひいてしまうことも。の訪れも早く、8月下旬になるとコートが必要な日もあるほどで、9~10月はくもりの日や霧雨が多くなる。11月に入ると一気にらしくなるが、最も寒い1月くらいでも平均気温は3度ほどなので、そこまで寒いわけではない。ただし厚手のコートや手袋、マフラーなどの防寒対策は必須。日本のようないわゆる梅雨のシーズンはなく、年間を通して降水量はそれほど変わらないが、200日は降雨がある。ただし一日中降り続くことは少ない。観光のベストシーズンといわれるのは、4~10月くらい。

 

(3)言語

ベルギーの言語事情は少々複雑で、同じ国内で地域によって公用語が異なっており、人口の約60%にあたる北部のフランドル地方ではオランダ語が、南部のワロン地方ではフランス語が話されている。実際に言語境界線なるものが、ブリュッセルの南部を横断する形で公式に設定されている。これは19世紀に王国として独立してから、ふたつの地域の住民による“言語論争”と呼ばれる長きにわたる対立の末に1963年に設定されたもので、地続きのヨーロッパらしい複雑なお国事情が見て取れる。事実、この線を境に教育システムマスメディア政治なども言語別に分かれていて、列車で移動しているとエリアによって乗客の言葉がガラリと変化するのを実感できる。またベルギーでおなじみのビールも、ラベルに書かれている言語を見れば、読めなくてもどのエリアで作られたのかを判別することができる。

そしてさらにややこしいのが、ブリュッセルの存在だ。先述した通り、言語境界線はブリュッセルの南部に引かれており、地理的にいうとブリュッセルはオランダ語を話すフランドル地方に含まれている。ただしブリュッセルは、公式にはフランス語とオランダ語の2言語併用地域なのだが、フランス系住民が多いことなどにより、フランドル地方でもここだけが陸の孤島のような状態で圧倒的にフランス語話者の多いエリアとなっている。こうした複雑な事情もあって、ベルギーはオランダ語、フランス語、英語を話せる人が非常に多い(ただしワロン地方はオランダ語、英語ともに通じないケースが少なくないようだ)。英語を話せれば生活にはさほど困らないが、ブリュッセルに住むのであればフランス語も理解できたほうがいいに越したことはない。

またベルギー南東部のルクセンブルクとの国境地帯ではルクセンブルク語が、ドイツとの国境地域ではドイツ語が話されている。

 

(4)人種

地理的特徴や話されている言語からもわかるように、ベルギーは多様な人種の暮らす国だ。ブリュッセルはその傾向が特に顕著で、コンゴ民主共和国、ルワンダ、ブルンジなどの旧ベルギー植民地以外に、モロッコ、トルコ、イラン、パキスタンなどからの労働者が多く実に国際色豊か。加えて近年は、アジアや中近東からのイスラム系の移民が増加傾向にある。

 

(5)通貨・物価

ベルギーの通貨は、EU統一通貨のユーロ(EURO)セント(CENT)。日本円からユーロへの両替は、日本でやったほうがレートがよいので、短期の滞在であれば必要な現金を事前に両替しておくのがよいだろう。クレジットカードレストランデパート、スーパーマーケットなど日本と同じ感覚で使うことができる。小さな店だと使えないところが多いのも日本と同様。ベルギーで比較的使いやすいカードは、VISAMASTER。ホテルやレストランの料金には、サービス料が含まれていることが多く、その場合はチップを払う必要はない。ただし、おつりの小銭をテーブルに残す習慣は残っている。物価は、公共交通機関の料金は日本より安いが、外食は高いといった印象。ベルギーに限ったことではないが、ヨーロッパにおいてレストランは基本的にしっかり食べる場所なので、日本の定食屋のような感覚でサクッと食べることができず、どうしても割高になってしまう。長期滞在するのであれば、自炊をどのくらいするかで食費がかなり変わってくるだろう。ブリュッセルは都市なので、国内のほかの町と比べて全体的に物価が高めなのは致し方ない。

 

(6)治安

欧州委員会統計局の2012年の統計によると、ベルギーの犯罪総件数はEU内で9番目強盗は6番目殺人は9番目に多い国となっている。このデータだけで治安を判断するのは難しいが、ほかのEU諸国と比べて治安が悪いという印象は受けないはずだ。ブリュッセルは街の規模も小さいため、首都といえどもパリやロンドンなどと比べて、どことなくのんびりしている。日本人が特に気をつけるべき犯罪は、スリ、置き引き、引ったくり、車上狙いなどの盗難。ブリュッセル市内だと、南駅、電車、バス、メトロ等の公共交通機関の車内、グラン・プラス周辺でこうした被害が多いようだ。南駅は一般的に治安の悪いエリアといわれているので、夜間のひとり歩きは避けたいところ。

 

(7)食文化

美食の国ベルギーは、隣国フランスの影響を大きく受けた豊かな食文化があることで知られている。ベルギー流フレンチなどとよくいわれるが、フレンチほど気どらず、素朴な味わいの料理が多いのが特徴だ。たとえばベルギーを代表する料理としてあげられるのが、ムール貝のワイン蒸しや、フリッツ(フライドポテト)、牛肉をビールで煮込んだカルボナード・フラマンドなど。春になると、みんな競うようにして、フランドル風アスパラガス(ゆでたホワイト・アスパラガスに刻んだゆで卵とバターのソースをかけたもの)を食べるのもおなじみの光景だ。北海に面したフランドル地方海の幸が豊富なのに対し、内陸となる南部のワロン地方ジビエが人気。ブリュッセルのレストランの数は、人口比でヨーロッパ第1位といわれており、美食の国の首都にふさわしい多彩な食を楽しむことができる。

次回は入国する際に必要な手続きや、ロングステイをするために必要なビザとその取得方法などについてレポートしよう。

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