人工知能によるパラダイムシフトが起こりつつあるなか、日本はどうなっているのか。それに気づいている国会議員はどれくらいいるのか。日本政府が人工知能に出遅れていることに何かコメントを発しているのは見たことがない。岸田首相もまるっきり何も考えていないように見える。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
いきなり始まった人工知能による革命
検索エンジンの王者であるGoogleが、激震している。2023年2月7日、Microsoftは彗星のごとく現れて人工知能の新しい時代を知らしめた「ChatGPT」を自社の検索エンジンであるBingに統合して、プレビュー版を提供したのである。
非営利法人OpenAI Inc.が生み出した「ChatGPT」とは何か。これは大量のテキストデータを学習した人工知能が、ユーザーの問いかけに「高い精度」で解答を出してくれるものである。
今までの検索エンジンは、ユーザーが求めているものが掲載されたウェブサイトを羅列するものだったが、今後はウェブサイトを見る必要もなく、答えを人工知能が示してくれるようになっていくのである。
確かにそのような未来が「いつか」来るのではないかと私たちは誰もが想像していた。しかし、その「いつか」はもうChatGPTによって達成されて、いきなり実用化の段階に入ったのである。
まもなく「ググる」は過去のものに
Googleは検索エンジンの市場を独占して2022年には1兆1,500億ドルの純資産を持つ超巨大企業なのだが、人工知能が何でも答えてくれるようになるのであれば、もう誰も検索しないでChatGPTに何でも聞くようになる。
これはすなわち、Googleのビジネスの凋落を意味する。
もちろん、ChatGPTも100%完璧ではない。そのため、明日からすぐにGoogleが凋落してしまうわけではない。しかし、Googleのビジネスが大きく痛み出す予兆にもなるわけで、それを恐れた投資家は不安に駆られてGoogleの株式を売り飛ばす様相となっている。
もちろん、Googleも黙っていない。Googleはチェス王者や囲碁の王者を叩きのめすほどの能力を持ったDeepMindを所有している。OpenAIと組んだMicrosoftに対抗するために、Googleもまた対話型の人工知能のシステムを急いで提供する準備を始めた。
人工知能は軍事目的にも活用されることになる
人工知能が数行の文字列を入力することで、絵を描いて提供するようになった。人工知能が人間に心地良い音楽を創造するようになった。人工知能が人の問いかけに答え、詩を創作し、論文を書き、ニュース速報を書き、物語を提供するようになった。
すでに人工知能は社会のあらゆる部分に浸透していくようになってきており、私たちは知らずして人工知能に依存するようになっている。人工知能による社会のパラダイムシフトは、もう始まっているのである。
ChatGPTによる変革もその1つに過ぎないわけで、これからもあらゆる分野が人工知能で変化していくことになるだろう。私たちが想定していないところでも人工知能が使われて社会を激変させる可能性がある。
たとえば、人工知能は軍事目的にも活用されることになる。実はGoogleは当初から人工知能を軍事目的や監視目的で使用するソリューションをアメリカ政府に提案していたのだが、2018年になってグーグルは「同社の人工知能を武器や不当な監視活動に使わない」と表明した。
これは人工知能が人殺しに使われることにグーグルの多くの社員が反対したことを受けた上層部の措置だったのだが、CEO(最高責任者)であるサンダー・ピチャイ氏はそれでもこのように付け足している。
「我が社は武器における利用のためには人工知能を開発しないが、その他多くの分野で政府および軍との協力を続けることを明確にしておきたい」。
間違いなく、将来のどこかで人工知能は米軍のシステムの深い部分で活用されることになるのは間違いない。Googleがやらなくても他社がやる。
たとえば、ピーター・ティールが設立したPalantir(パランティア)社は膨大なデータを可視化して、まったく関連性のないように見えるデータを密接に照会することによって新たな事実を発見するシステムを持っている。これはすでにアメリカ軍によって使用されている。
だから、アメリカ軍は全世界の軍事行動を即座に正確に把握することができるようになっている。アメリカは人工知能をお遊びやら利便性で進めているのではない。世界最強の軍事機関を維持するために、人工知能は活用されていく。
Next: やがて危険で凶暴な人工知能が開発されて戦場へ投入される。日本は…?
危険で凶暴な人工知能が開発されて国防に組み込まれていく
人工知能が軍事により深く関わるようになると、これからは人工知能が人を殺すことになるのは必至だ。人工知能は「敵を効率的に殺すための方法」を見つけてくれることになり、軍は人工知能の戦略を元に戦争を進めていく。
人工知能は別に善悪を判断しないので、人類が使い方を間違えると凄まじく荒廃した社会を生み出すことにもなるはずだ。
米マサチューセッツ工科大学は以前「人工知能を活用したサイコパス・アルゴリズムを開発した」と発表したことがある。
人工知能に投入するデータをインターネットのアングラサイトに限って育てていくと、人工知能のアルゴリズムが「どのようなイメージを見ても死を連想してしまうようになっていった」というのだ。
この研究は示唆に富んでいる。軍が「いかに効率よく人間を殺すか」というデータを大量に人工知能に教えてアルゴリズムを発展させていくと、人工知能は容赦なく合理的かつ効率的に人間を殺戮するアルゴリズムを発達させることを予測させた研究でもあったからだ。
戦争は「勝てば官軍」なので、アメリカがやらないのであれば倫理観も道徳観もない中国がやる。中国がやるのであれば、ロシアもやるし北朝鮮もやる。そうであれば、敵を上回る能力を求めるアメリカもやらないわけにいかない。
核兵器が人類を何度も絶滅させることができるくらい量産されたのと同じく、今後は危険で凶暴な人工知能が開発されて国防に組み込まれていく。各国はそれを研究し、やがて実戦に取り入れるようになるのは確実だ。
もう人工知能は野に放たれているので止まることはない。
人工知能によるパラダイムシフトが起こりつつあるなか、日本は…?
人工知能は良くも悪くも世の中を大きく変えていくということを、私たちは考察しなければならない。人工知能は、次の時代の強烈なイノベーションである。それは私たちの想像以上のものになる。
今は萌芽期であり、人工知能がどのように社会を変えていくのか、まだ全貌が見えてきていない。しかし人工知能によって社会が大きく影響を受けて激変するというのは、ほぼ間違いない未来となった。
人工知能が全世界を掌握する。そうであれば、人工知能というブラックボックスをコントロールする企業が全世界を支配するということでもある。それは、GoogleやMicrosoftのような私たちの知っている企業かもしれないし、もしかしたら今はまだ無名の企業かもしれない。
次のMicrosoft、次のGoogleが人工知能のジャンルから生まれるのは間違いないのだが、どこが王者になっていくのかは誰にも分からない。ただ、人工知能の開発は莫大な研究費が必要になるので、当面は現在のアメリカのIT企業の雄が人工知能の分野を牽引していくことになる。
ところで……。
人工知能によるパラダイムシフトが起こりつつあるなか、日本はどうなっているのか?
Next: 置いていかれる日本。岸田首相はまるっきり何も考えていない?
岸田首相もまるっきり何も考えていないように見える
人工知能による革命が、今まさに目の前で起きている。
しかし、それに気づいている日本の国会議員はどれくらいいるのか。日本政府が人工知能に出遅れていることに何かコメントを発しているのは見たことがない。岸田首相もまるっきり何も考えていないように見える。
日本政府は増税することばかりに頭が向いていて、世の中がどのように動いていき、どの分野に焦点を当てて国家事業で育成していくべきなのかという「国家百年の大計」を持たない低能な機関と成り果てている。
日本をどのように変革し、日本をどのように経済成長させることができるのか、まるっきり分かっていない。何も分からないので何の対応もできない。それが今の国会議員である。
そのため、日本は次の時代も大きく引き離されていくのは目に見えている。
人工知能は社会を激変させようとしているのだが、このまま日本は乗り遅れてしまうのは「ほぼ確実」なので、経済成長も国防も成し遂げられず、社会を時代遅れにして劣化させてしまうことになる。
数年後に気づいたとき、もう日本は手遅れになっているのではないか。
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本記事は鈴木傾城氏のブログ「ダークネス」からの提供記事です。※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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