日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳。平均寿命が延び続ければ、2040年頃には日本人の半数が100歳以上まで生きることになる。凋落を余儀なくされ、すでに国民負担率が5割近い状況の中で、高齢者はいつまでも長生きする。高齢者の貧困問題は壮絶なものにならざるを得ない。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
高齢者がいったん貧困に落ちると、死ぬまで貧困
2024年の日本は能登半島地震という衝撃的な災害によって幕を明けた。日本はどこにいても地震と無縁であることはできないわけで、多くの日本人は報道を見ながら「明日は我が身か」と気を引き締めたはずだ。
ある程度の蓄えがあったとしても、あるいは不動産があったとしても、失うときは一瞬で失うというのが能登半島地震で見えてきた日本の姿でもあった。
報道を見ると被災者の多くは高齢者で、家も共同体も失って呆然としている姿が痛ましかった。慎ましく暮らしていた高齢者が巨大災害に見舞われたら、もはや為す術がない。生活保護が彼らの最後の砦となるだろう。
2020年の厚生労働省のデータでは、生活保護世帯の52%は高齢者であり、高齢者の割合は年々増加傾向にある。今後もこの傾向は増え続け、恐らく高齢者が60%を超えるときもくると私は見ている。
何しろ現在の50代では5割近くが国民年金未納なのだが、彼らが高齢化したらもう生活保護しかないのである。
年金を受給できる高齢者であっても、今後は、いろんな予期せぬ理由で蓄えがなくなってしまうと年金で食べていけない以上は困窮まっしぐらと化す。
彼らは体力的にも能力的にも仕事ができない以上、生活保護に頼るしかない。そして、いったん生活保護に頼ると、以後は生活保護から脱することができない。高齢者がいったん貧困に落ちると、死ぬまで貧困なのである。
「高齢者の貧困問題」は、すでに日本の最大の社会問題なのだが、最近はそれが顕在化してきている。最悪なのは、数十年も前からわかっていた少子高齢化問題をまったく解決できなかった無能な政治家が今後も何かできるわけでもないことだ。
最終的には高齢者が必然的に見捨てられる社会が到来
少子高齢化を放置し続けてきた政府が高齢者の貧困で思いつく政策と言えば、税金や社会保険料を引き上げて、高齢者に分配することくらいだろう。しかし、すでに実質的な国民負担率は5割をとっくに超えており、このやり方にはもう限界がきている。
では、国債をどんどん発行して社会福祉に充てればいいではないかと言っても、財務省がやるわけがない。政治家も基本的に緊縮派しか内閣に入れない。
そうしている間に高齢者の貧困問題は深刻化していき、もはや解決できるリミットは超えた。いずれ「高齢者の貧困は解決できないので、今後は見殺しにする」という社会になっていくのではないか。
Next: 高齢者はなかなか死ねない人生を迎えることになる…
今後、物価上昇が進むようであれば高齢者の貧困はもっと顕在化する。物価上昇に年金額が追いつかないからだ。ただでさえ足りない年金がもっと足りなくなる。
生活保護を受けていない高齢層でも、国民生活基礎調査を見ると、高齢者で「生活にゆとりがある」と考えている層は4%しかおらず、50%以上の層は「生活が大変苦しい」「やや苦しい」の中に入っている。
同じ物価上昇でも、景気がガンガン良くて、賃金も上がり、将来に展望があり、少子高齢化もない社会であったら、年金額は物価に合わせていくらでも引き上げられただろう。
しかし日本は景気もそれほど良くなければ、実質賃金もずっとマイナスで、将来には悲観しかなく、少子高齢化がもっと進む社会である。何度も言うが、政治家はそれを解決する能力がまるっきりない。
そうなると最終的には高齢者が必然的に見捨てられる社会が到来すると考えられる。社会が高齢者を見捨てるというよりも、社会が高齢者を養いきれなくなると言った方が正解かもしれない。
高齢者はなかなか死ねない人生を迎えることになる
今後、社会保障費はとめどなく増え続けるので、焦った政府はさらなる消費増税や社会保険料の引き上げを画策し、同時に社会保障の削減に走る可能性が高い。
社会保障が削減されたら直接的にダメージを受けるのは高齢層だ。政府がどこまで社会保障を削減するのかはわからないが、どこかの時点で高齢者は「自助努力せよ」と蹴り出され、見殺しにされる覚悟しなければならない。
生活は苦しい。貯金を取り崩していると、そのうちに消えてなくなってしまう。年金は少ない。それなのに徐々に徐々に年金の額は減らされていく。しかし、長い目で見ると物価は必ず上昇する。
高齢者は真綿で首を閉められるように経済的に追い詰められていく。日本は経済停滞が今後も続く可能性が高いが、今の社会維持に限界がきたとき、高齢層の貧困と苦境は地獄のような惨状を呈することになる。
そんな中だが、医学の発展は目覚ましく、高齢者はなかなか死ねない人生になる。
かつては人生60年くらいだったが、今では人生100年時代が言われるようになっている。現在の日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳である。このまま平均寿命が延び続ければ、2040年頃には日本人の半数が100歳以上まで生きると予測されている。
凋落を余儀なくされ、すでに国民負担率が5割近い状況の中で、高齢者はいつまでも長生きする。医学は高齢者を死なせないので、高齢者の多くは寿命よりも財産のほうが尽きる。
無一文になっても死ねないのであれば、生活保護に頼るしかない。しかし、あまりにも高齢者は増えすぎて社会保障費が増大して現役世代が支えきれなくなったら、どこかで無能な政府は高齢者を見捨てる政策に転換するだろう。
Next: 政府が見捨てたらどうなる?「高齢者の貧困問題」は壮絶なものに…
日本の「高齢者の貧困問題」は壮絶なものになるはずだ
高齢者が見捨てられたら、どうなるのだろうか。そうなると、高齢者犯罪が当たり前になっていく時代がやってくるのかもしれない。その萌芽はすでに今起こっている「高齢者の万引き」で見て取れる。
万引きは高齢層が手を染めることが多い犯罪である。
高齢層は体力がないので、強盗のような荒っぽい犯罪はできない。そのため、彼らの犯罪で必然的に多くなるのは万引きである。もうすでに、刑務所は万引きで逮捕された高齢者たちの老人ホームと化している。
実は、高齢者の万引きは一概に「貧しいから」で説明できるものではない。たとえば、地域社会からの孤立や疎外感がそれを引き起こしていると説明されることも多い。
高齢層は大人しくしていると誰からも相手にされない。しかし、問題を起こすと大勢が自分を構ってくれる。自分の話を聞いてくれる。
そのため、高齢者の中には孤独と疎外感から逃れるために、わざと万引きして問題を起こすこともあるのだ。
しかし本来であれば、ゆとりがあれば万引きも考えることはないわけで、こうした犯罪は「無意識の経済的な不安」が引き金になっていることも多い。
日本では経済的に追い詰められた高齢層がこうした考えに至り、問題行動を起こしていた。高齢者がより追い詰められるのであれば、今後はより顕著になるだろう。
高齢層の貧困は死ぬまで終わりがない。高齢ともなれば分別もあり人生経験も長いのだから、万引きのような愚かなことをするわけがないというのは間違いだ。的確な判断は逆に喪失していくと考えるべきである。
こうした高齢者の判断能力の低下を見越した詐欺も爆発的に増えていく。高齢者社会の日本では、ことさら高齢者の地獄が目に見えて大きく、悲惨なものになっていくものだと私は見ている。
日本の「高齢者の貧困問題」は壮絶なものになるはずだ。
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