となると、唯一、子供が増えるのはこれまで同様、郊外や農村に住む貧困層であり、子供が増えれば経済負担も増え、さらに貧困にあえぐという構図は簡単に想像できます。
今年6月、貴州省で起きた事件を覚えている人もいるでしょう。両親がともに出稼ぎで留守にしており、子供四人が荒れた農村の家に残され、親戚など世話してくれる大人が一人もいなかったため、子供四人は空腹に耐えられず農薬を飲んで自殺したという事件がありました。
● 中国・貴州省で子供4人が農薬自殺 出稼ぎで親不在の5~13歳兄妹 教育幹部ら処分
こうした問題はめずらしくありません。しかし政府は知らんぷりで、問題を解決する気もありません。一人っ子政策を撤廃したところで、中国の現状は何も変わらないでしょう。
人口の歪みも高齢化も貧富の差も変わらないどころか、農村の不幸な子供がさらに増えるだけです。貧富の差を是正し、保育所や学校、児童検診など地域社会での育児環境を整えることのほうが先決でしょう。いまさらの一人っ子政策撤廃など、全く無意味な政策です。
むしろ貧困層が増えることで、中国の食糧問題が再燃する可能性すらありますし、農民工のような流民がますます増加し、治安の悪化や、国内で暴動がいま以上に頻発するという事態を招きかねないでしょう。
加えて、一人っ子政策撤廃の決定は遅すぎると言われています。少子高齢化が進み労働人口が減少している中国にとって、労働力の確保は重要だからです。今さら人口抑止をやめても、子供が生まれてから労働力になるまでには20年かかります。
しかし、それまでには中国経済は絶望的な状況になっていることでしょう。今でさえ、都会にはアリ族やネズミ族があふれ、完全雇用の達成は絶望的です。中国経済の問題の根源には、産業構造の問題があります。
中国経済が減速するにつれて、毎年増え続ける軍事費と治安維持費を支えることは不可能になってくるでしょう。いくら人口を増やしても、中間層が増えずに貧困層のみが増えれば、消費が伸びないどころか社会保障費が膨大となり、国家財政を圧迫します。
そうなれば、治安維持費も減少せざるをえず、一方では増え続ける貧困層の不満が蓄積されていけば、天下大乱は避けられません。
康煕帝から乾隆帝までの間、清朝の人口は十倍にも増えました。その結果、19世紀には餓死者が1000万人以上にものぼる飢饉が三回もありました。人間どうしの共喰いが12年に一度、全国的な規模で発生していました。
現在の中国の人口がどのくらいあるのかということについては、政府も把握できていません。闇人口があまりに多く、実際の統計が取れないのです。
国務院内の各省庁が使う数字も、それぞれ違っています。今のところ、中国の人口は13億から15億人だといわれていますが、その差は2億人以上もあります。日本の人口の2倍近くの誤差です。さらには、17億人だろうという説さえあります。
政府が人民の数を把握していないのだから、その数は誰にもわかりません。選挙をする必要がないから人口を知る必要もないのです。
中国は、すでに地球資源を買いあさり、鯨飲しています。食料の備蓄もあまりないため、南シナ海を自分のものにしようとしているのです。中国人を養うための資源はそれほど逼迫しているのです。
中国には消費するだけでなく、生産する術をなんとか学んでもらわなければ、世界が中国と共倒れとなるでしょう。
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『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋
著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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