問題は、都会に住む中間層でしょう。一般サラリーマンの彼らは、不動産バブルのなかで家を買い、多額の住宅ローンを抱えています。そのため、二人目の子供を持つ余裕がありません。
中国で子供を一人育て上げるのに必要な金額は49万元(約590万円)とされています。ところが都市部の平均年収は、国有企業などの非民間部門で5万1500元(約83万円)、民間企業では3万3000元(約54万円)程度です。
子供一人を20年間育てる間に得られる収入は多くて100万元で、その半分、あるいはそれ以上を養育費に回さなくてはならない状況であり、親は「孩奴」(子供の奴隷)などと呼ばれています。
そのような状況で、二人目はまず無理でしょう。共働きでようやく可能かどうかというレベルです。
しかも、中国経済が下降している現在、多額のローンを抱えているなかでは、ますます厳しくなると思われます。
実際、出産適齢期の1980年代生まれ(80後)や90年代生まれ(90後)世代では、「二人目はいらない」と答えた割合が56.8%にも及んでいると報じられました。その理由のトップはやはり「養育費が高すぎる」ということでした。
● 変わる中国人の出産観 80後90後の半数が「2人目はいらない」
つまり、二人以上が欲しい富裕層はすでに二人以上の子供を産んでいるのに加えて、中間層は二人目を欲しがらない。そのため、一人っ子政策が撤廃されたからといって、二人目を希望する夫婦の申請が殺到することはないでしょう。
報道では、一人っ子政策撤廃により労働人口が3千万人増加、あるいは年間200万人前後の出生が見込まれるため、ベビー関連商品の絶好の商機だとも言われています。
しかし、以上のような理由から、景気浮揚に大きく寄与することは望み薄です。とくに消費を担う中間層が子供を欲しがっていないのですから。