特別対談Part2 高城剛×石田衣良「大手出版社は思考が役人と同じ」

 

石田:へー。すごい。そんなの考えたことなかったな。

高城:僕は出版社ではなくて、デマンドサイドって言ってるんですけど、作家はデマンドサイドになれるかどうかなんですよ。ですから僕らはコンテンツを作るクリエイターであって、ホルダーであって、デマンドサイドでもあるんです。

石田:今の出版は、これまでの形態ですごく利益を享受してきたので、それを丸々飛び越えるのは、なかなか難しいんだよね。だから、まったく別な出版社と組むとか、今までのところで書き続けながら、新しいところでは別な本の書き方や売り方を考える、という風にするしかないのかもしれないなぁ。

高城:両方じゃないですか。やっぱり今は両方やらなきゃいけないんじゃないですか。

石田:でも、メルマガはその点、もう流通の経路がまったく違うじゃないですか。紙の本とは。

高城競合しないですからね。

石田:そうそう。だから独立して切り離せるんだけど、紙の本となるとなかなかむずかしいよね。そういえば、村上龍さんがやってた小説の配信はどうなんですか?

高城:詳しくはわかりませんが、あれは広告モデルでやっているように見えます。実際はともかく、そう見えてしまっているのがポイント。

石田:デジタルで雑誌を作って代理店をかませたってパターンなんですかね。今、高城さんが話していた配本まで、こちらで指定するというやり方とは全然違いますね。

高城:僕は、読者に近くなりたいと思ってるだけですので、そうしています。

石田:それって、日本でやってる人ってどれくらいいます?

高城:ほかの作家の方々とはまったくお会いしてないので、わからないですね。僕は大手出版社からの紙の本も、可能な限り配本指定します。僕の方がお客さん知ってるじゃないですか。だって僕のお客さんだもん。

石田:ああ、確かにね。僕は自分のお客さんのこと知らないなぁ。

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高城:それは問題じゃないですかね。書き手としても。

石田:そこが、さっきの危ないパターンですよ。サイン会でたくさんの読者に会ってはいるけど、本当のところはわかんないもんなぁ。

高城:僕は書きたいものを自分で書いてるけど、それを届ける時にはやっぱり求めている人にきちんと届けたいんですよ、価格も含めて。だから、僕の本を買ってくれる人たちの服やカメラの好みまで、それなりに理解しているつもりです。その人たちのライフスタイルの一辺に、僕のメルマガや本があるわけですから。

石田:そっかぁ。でも、それを考えている人は、日本の作家では、まずいないですね。やっぱり作家も出版社と一緒で、書いて放り出しモデルなんですよね。小説の場合はリアクションはもう読めないので。

高城洋服業界もかつてはそうだったんです。ファッションデザイナーがいて、大手に洋服デザインを供給して、それを百貨店に卸していました。それがここ10年強で、SPA製造小売)という形態になりました。つまり自分達で工場生産して、自分達の店で直接売る。その工場では、店舗でお客さんと会ったデータが、瞬時に工場に戻っているわけですよね。お客さんがこんなものを求めていると。すると最短半月で店頭に出ます。このサイクルで「ユニクロ」も「ZARA」も伸びていったわけで、出版業界SPAモデルになれば、抜本的に変わると思いますよ。

石田:うわー、なるかなー。でもそのサイクルって2年とか3年じゃだめですか(笑)。

高城:ダメだと思いますね。

石田:そんなに速く書けないよー(笑)。

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