結局、尖閣有事の際にアメリカは日本を守ってくれるのか?

 

日米安保は機能しているか?

既述のように、ここ数年「アメリカは、日本と中国が戦争になったとき、本当に日本を守ってくれるのか?」という議論をよく耳にします。これについて、私は明確な答えを出せません。というか、だれも断言できる人はいないはずです。断言する人がいても、「推測」を「絶対そうだ!」と言いかえているにすぎません。

比較的最近の例で、アメリカに捨てられ領土を失った国があります。コーカサスの旧ソ連国、グルジア(ジョージア)です。グルジアは、研究者の間では、「アメリカの傀儡国家」として知られています。

「傀儡国家」になったのは、03年のバラ革命以降。この国は08年8月、ロシアと戦争をしました。その結果、グルジアは、同国からの独立を目指していた南オセチア、アプハジアを事実上失ってしまいます。ロシアが、南オセチア、アプハジアを、独立国家として承認してしまったのです。アメリカは、ロシアからグルジアを守りませんでした。こんな例を見ても、「アメリカは日本を守るのか?」という疑念には、一理あります。

もう1つ、「日本側の立場」もアメリカの政策に影響を与えることでしょう。たとえば、日中戦争が起こったとき、「米軍を沖縄から追い出せ!」という立場の(鳩山さんのような)政治家が総理大臣だったら? アメリカとしては、「俺らに『出てけ!』というのなら、日本だけで対処できるのだろう。お手並み拝見だ!」と考えるに違いありません。

では、「日米安保」はムダなのでしょうか? そうとも言えません。現時点ですでに、「日米安保」は有効に機能しているといえます。たとえば、2010年の「尖閣中国漁船衝突事件」を思い出してみましょう。あのとき中国は、自分たちに責任があるにもかかわらず、日本に対して次々と制裁を打ち出し、私たちを仰天させました。9月7日に事件が起こったあと、中国は一貫して超強気の態度を崩さなかった。しかし、9月末ごろになると、一気にトーンダウンしていきます。考えられる唯一の理由は、アメリカがはっきりと日本の味方についたことです。

当時

・スタインバーグ国務副長官
・クリントン国務長官
・ゲーツ国防長官
・マレン統合参謀本部議長
・オバマ大統領

などが、相ついで日本を支持する声明を出しました。特にアメリカが「尖閣諸島は安保条約の適用対象」と宣言した効果は大きかった。中国はアメリカと戦いたくないので、おとなしくなったのです。ですから、「日米安保」は事実として役に立っている。もしアメリカが2010年9月、「尖閣は日米安保の適用対象外」と宣言すれば、尖閣はとっくに中国のものになっていたでしょう。

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