日本経済の反撃は、世界最大の超精密機器・リニアコライダーにかかっている

 

何しろ、おカネなど中央銀行がいくらでも発行できますが(※インフレを無視すれば)、超精密機器を製造するためには、膨大な数の企業が存在し、それぞれが高度な技術力を誇り、さらに各企業の技術を統合するインテグレーション能力、プロジェクト管理能力が求められるます。この手の「供給能力」は、おカネを出すだけでは身に付きません

実際に、様々な製品を生産し、技術やノウハウ等を蓄積し、さらに日々、技術力に磨きをかける「仕事の現場」の人々の向上心がなければ、絶対に「存在」し得ないのでございます。現時点で、国際リニアコライダーを建設するために必要な「供給能力」を、日本が「まだ」保有しているという事実が、どれほど重要であるか。

デフレーションは、企業から仕事を奪うことで、各企業に蓄積された供給能力を毀損、喪失させていきます。すなわち、国家の経済力を縮小させてしまうのです。

一度、喪失してしまった供給能力を回復するためには、これは膨大な時間と蓄積を必要とします。大東亜戦争敗北後に航空技術の研究開発を禁じられた我が国は、未だに戦闘機製造技術で他国の遅れをとっています。

これ以上の「供給能力」「経済力」の喪失を食い止めるためにも、我が国は「企業の仕事」としての大規模プロジェクトを必要としているのです。しかも、現時点の技術開発投資、公共投資、設備投資は、デフレの主因たる需要不足の解消に役立ちます。

というわけで、リニア中央新幹線や国際リニアコライダーといった大規模プロジェクトを現実のものにできるか否かは、我が国の経済、将来に決定的な影響を与えます。それにも関わらず、経済力の本質を理解していない政治家、官僚、学者たちは、「カネ」の問題にばかり重点を置き、将来のための投資を「ムダだ!」と否定しようとします。

そもそも、経済力とは「カネ」の話ではなく、「供給能力」であるという経済の真実を、日本国民は早急に共有する必要があると思うのです。

image by: IFCA

三橋貴明の「新」日本経済新聞
経済評論家・三橋貴明が責任編集長を務める日刊メルマガ。三橋貴明、藤井聡(京都大学大学院教授)、柴山桂太(滋賀大学准教授)、施光恒(九州大学准教授)、などの執筆陣たちが、日本経済、世界経済の真相をメッタ斬り!日本と世界の「今」と「裏」を知り、明日をつかむスーパー日刊経済新聞!
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